『ぺっとぼとリテラシー vol.3 ~レセプションパーティー in TOKYOでひとつになりまショータイム~』
ましのみの音楽に広がる無限の可能性 成長や変化を感じた学生最後のワンマンライブ
ましのみが『ぺっとぼとリテラシー vol.3 ~レセプションパーティー in TOKYOでひとつになりまショータイム~』を3月21日、渋谷ストリームホールにて開催した。
ましのみは、先月大学を卒業したばかりのシンガーソングライター。この日のライブが現役大学生としての最後のステージだった。今年2月にリリースした『ぺっとぼとレセプション』のインタビュー時、「もっと(リスナーに)寄り添って優しさも愛もある中で私の世界に誘いたい」(参照:ましのみ『ぺっとぼとレセプション』は“聴き手に寄り添う”作品に 楽曲制作に活かされた経験と成長)と語っていたように、このライブでは観客を自らの世界観に招き入れ、共に楽しもうとするましのみの姿があった。
現役大学生でメジャーデビューを果たしてから今日に至るまで、目に見える成長を遂げているましのみ。アーティストとしてはもちろん、ひとりの女性としての変化もそのまま楽曲のテーマや言葉に表れている。そのため、メジャーデビュー後に生まれた曲は、特に同世代の心に響くような共感性の高いものが一層増えた印象だ。
ライブの1曲目を飾った「‘s」は〈アポストロフィsが彷徨う〉という言葉で“だれのもの”にもなれない恋愛のもどかしさが歌われている。ポップさの裏に見え隠れするせつない思いがダンスのビートに乗せてポジティブに歌われると、不思議と心が晴れやかになる。ライブ全体を通してそういった爽快さがあった。
ましのみの楽曲はどれも言葉選びのセンスが秀逸でユニーク。「プチョヘンザしちゃだめ」「美化されちゃって大変です」「エゴサーチで幸あれエブリデイ」のようなタイトルからしてインパクトのある曲、学校で教わることだけでは解決できない真理を問う「Q.E.D.」などのオリジナリティある曲が並ぶ。
また、キラキラとした音色のエレクトロチューン「Hey Radio」「フリーズドライ please」のような体を揺らしたくなるデジタルサウンドも特徴のひとつだ。デビューアルバム『ぺっとぼとリテラシー』にはagehaspringsの横山裕章がサウンドプロデュースや編曲などを手がけた楽曲が多数収録され、2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』には、「タイムリー」で歩く人、「コピペライター」でGuianoといった同世代のアレンジャー陣と作り上げた楽曲も収録されている。サウンドで楽しむことができる楽曲がライブ映えする一方、ピアノを弾きながらしっとりと歌い上げた「錯覚」もましのみの歌声の魅力を味わえるハイライトとなっていた。
堂々としたパフォーマンスに加え、楽曲に込めた思いを伝える姿からもましのみの成長を強く感じた。「コピペライター」の前には、誰かに似ている、もうすでにあるーーそんな言葉で自分の個性を邪魔されないように、とましのみは観客に語りかける。また、〈働かないで贅沢したい〉〈存在だけで愛でられたい〉といったフレーズが飛び出す「AKA=CHAN」は「人間の真理、魂の叫び」と紹介し、解放感たっぷりなダンスとともに披露。さらに、恋愛、友情、仕事……日々を過ごす上で辛いことがあったときに寄り添えるような歌を歌っていることを改めて伝え、ファンの幸せを願いながら、本編最後を愛の頂点を景色で切りとったというドラマチックな「ゼログラビティのキス」で締めた。