EP『邂逅ノ午前零時』インタビュー

CIVILIAN、他者との交流&自身最長ツアーで芽生えた変化「表現方法にこだわってる場合じゃない」

 CIVILIANはバンド史上最長となった全国ツアー『“Hello,civilians.”2019全国編』をもって、新たなフェーズへと突入したようだ。Lyu:Lyu時代のO-EASTを超えるキャリア最大規模となる赤坂BLITZで行われたファイナル公演では、初のコラボレーションEP『邂逅ノ午前零時』にフィーチャリングアーティストとして参加したまねきケチャとmajikoを迎え、ポエトリーリーディングやハンドマイクでの歌唱も披露した(参考:CIVILIANがステージ上で告げた“新たな出発” majiko、まねケチャ参加したBLITZ赤坂公演レポ)。

 そして、アンコールでは、ボーカル&ギターのコヤマヒデカズが「今回のツアーでは、これまでやっちゃいけないなと思ってきたことをやってきました。これからは本当にやりたいことをやろうと思います」と宣言。ギターロックやオルタナティブロックというジャンルのラベルを剥がし、“いちメンバーいち楽器”という旧態の役割分担やバンドという形態さえもフレキシブルに飛び越えようとする彼らはどこへ向かうのか――。ツアーを終えたばかりの彼らに直撃した。(永堀アツオ)

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音楽を始めた頃の初期衝動を呼び覚ました全国ツアー

――まず、バンド史上最長のツアーを終えたばかりの心境から聞かせてください。

コヤマヒデカズ(以下、コヤマ):あっという間だったなっていうのが率直な感想ですね。1月の末に北海道から始まった時にはまだまだ長いなって思っていたんですけど、あちこち旅してる感じをやっていたら、あっという間に終わっていて。終わるのが早いなって感じたっていうことは、それだけ充実してたんだなって思いますね

有田清幸(以下、有田):終わって、スタッフに「もう1周やろうよ!」って言ってました(笑)。本当にみんな充実して回ってたんですよね。それまでは毎回、トライ&エラーを繰り返してたんですけど、今回は楽しかったなって思います。

純市:今回のツアーから新しい試みをやり始めたんですけど、お客さんの反応がすごく良くて、盛り上がってくれて。すごい自由にやれてんなって感じましたし、もっと回りたかったですね。

――いま「自由にやれてんな」とありましたが、コヤマさんもファイナルのMCで「やりたいことをやるんだ」とおっしゃってましたね。

コヤマ:僕の中では初日からありました。3人でライブをやり始めた瞬間って、自分の中では表現欲求というか、何かをしたいっていう気持ちばかりが先走ってて。演奏や歌の内容は全くついていってなかった。そうやって自分の気持ちだけでひたすら突っ走ってたんですけど、ライブを重ねていくうちに、人に伝わる演奏とか、見てる人たちにとっていいものってなんなんだろう? って真剣に考えるようになって。「やっぱり歌はちゃんと歌わないとダメだな」とか、「ギターもちゃんと弾かなきゃ」って思い始めてた時期があったんですよね。そこから、自分の中で、いわゆる、プロフェッショナルとして最低限の安定した演奏や歌を見せられるようになるまでは、自分の気持ちだけで突っ走った演奏はもうやめようって決めたんです。もう1回、自分の歌を練習し直したりすることが何年も続いて。そうやってるうちに、自分の中でも無意識のうちに閉じ込めてたものができてしまって。ライブでこれはやってはいけないとか。

 でも、去年の後半くらいかな。ふといつの間にか、歌唱力という点でも、ギターを弾く技術という点でも、自分が以前よりも1個階段を登ったなって感じた瞬間があったんですね。だからこそ、今年に入って一発目のツアーで、歌とギターの安定度を保ったままで、もう1回、初期の頃の自分が音楽にかけていた衝動みたいなものを呼び覚ましたかったっていうか。1公演目からそういう思いでやってやってましたね。個人的に決めてました。

――それはバンドでも共有していたんですか?

有田:自由にっていうのは伝わってましたけどね。

純市:そうですね。話し合ったりはしてないけど、勝手に感じたりして。

有田:だから、僕はコヤマが自由になるのと逆の考え方もしてました。結構、派手な手数を出すことが多いタイプなんですけど、一周回って、なんの気兼ねもなく、諸手を挙げて、コヤマが集中できる環境をもっと作れないかなっていう考えになって。コヤマの自由度を増すためにできるだけ音源に近いドラムを叩くようにしたりとか。かといって、それを話し合ってるわけではないです。

コヤマ:バンドで、全員強制で1つの方向に向かっていこうっていうことは、ほとんど話さないですね。

有田:そうだね。たまに二人きりで話す時に、「最近、暴れてるね」「いや、自由にやってるんだよ」みたいな程度の会話しかなくて。あとは直接、演奏し合ってるからわかるしね。

――同じMCでは、「歌のその先にいきたい」とも言ってました。

コヤマ:このバンドよりも遥かに前、10代の頃からずっと歌に対して思っていたことがあって。ボーカルをとる人には、ざっくり分けて2つのタイプがいると思ってて。歌のうまさを前面に押し出すボーカリストと、言葉を伝える人がいると思うんです。僕は後者になりたいとずっと思っていて。上手いとか下手とかじゃないボーカリストになりたいってずっと思ってたんです。だから、最初は感情だけで突っ走ってたんですけど、バンドを長く続けていくと、それだけでは通用しない場面が出てくるんですよね。それを目の当たりにして、自分が伝えたいと思うことをちゃんと伝えるためには技術もなくちゃダメだなっていうことにぶち当たって。だからこそ、自分の歌を歌い始めた原点に戻って、上手い下手じゃないところまでいきたいんですっていう意味で言ったんだと思います。

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