三浦大知はポジティブなメッセージを伝え続ける 『ONE END』追加公演に感じた姿勢

 三浦大知による全国ライブツアー『DAICHI MIURA LIVE TOUR 2018 ONE END』の追加公演が、マリンメッセ福岡を皮切りに全5公演開催された。本記事では2月15日の日本武道館公演一日目をレポート。2018年は完全独演による『球体』公演、及びアルバム『球体』のリリースで話題を呼び、その後も「Be Myself」や「Blizzard」をたてつづけにヒットさせている三浦のパフォーマンスを体感してきた。

 開演直前、武道館はリハーサル後のためかスモークでぼんやりとかすみがかっていた。家族連れも散見される比較的幅広い客層が印象的だ。中央の360度ステージには半透明の巨大なスクリーンが数枚吊り下げられているほか、生バンドがステージのエッジに向かってぐるりと配置されていた。

 独演からアルバムリリースを含む一連の『球体』をめぐるプロジェクトは、それまで彼が見せてきたエンターテイナーとしての側面をあえて抑え、ストイックなパフォーマーとしての能力を発揮することに全力を振り切っていた印象だった。それだけに気になっていたのが次の一手。蓋を開けてみると、続く「Be Myself」では、『球体』で披露した表現力を見事にエンターテインメントへと昇華していた。きらびやかなサウンドにのせ、複雑なシンコペーションを歌いこなす姿は、堂々たるポップスターとしての風格を感じさせるものだった。

 『球体』というターニングポイント(と言っていいだろう)を経て迎えた今回のツアーでは、果たしてどのようなパフォーマンスを見せるのか。会場内のざわめきと共に期待が高まるなかで鳴り響いたのは、まさに「By Myself」だった。

 フォーメーションを組むダンサーたちをかき分けて登場した三浦。半透明のスクリーンはその姿を大写しにし、スペクタクルを演出する。ステージは中央部分が3つのパーツにわかれ、上下に可動する仕組み。そのほか、お立ち台のようにせり上がるボックスもいくつか用意されている。丁寧に振り付けされているであろうダンサーたちは、曲の展開にあわせて上下するステージを巧みに移動しつつ、無駄のない濃いパフォーマンスを見せる。スクリーンを用いた映像による演出は「Be Myself」で用いられた程度で、あとは照明とサウンド、そしてパフォーマーの身体が主役となる。もちろんその中心には、休むことなく駆け回り、歌い続ける三浦がいた。

 ボーカルであれダンスであれ、三浦のパフォーマンスでとりわけ印象的なのはある種の瞬発力だ。ダンサーたちはもちろん高いスキルを持っていて、グルーヴにフィットした俊敏な振り付けを見事にこなしていく。伴奏なしでダンスをシンクロさせるパフォーマンスももはやおなじみとなっている。しかし、三浦はどちらかというと歌唱でもダンスでも、リラックスしながら自由にビートにノッている印象が強い。にもかかわらず、ここぞというキメどころには必ずアクションで応える。わかりやすくいえば、感情の高ぶりを具現化するようなハイトーンのフェイクや、ハイキックなどがそうだ。常に全神経を研ぎ澄ませて身体をコントロールするというよりも、グルーヴを見事に身体化することで、リラックスした状態からいつでも跳躍できる、そうした能力がずば抜けているように思える。

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