GRAPEVINE、中村佳穂との『SOMETHING SPECIAL』 貴重コラボも実現した濃密ステージ

 ディープなバンドサウンドが渦巻くライブアンセム「豚の皿」からライブはクライマックスへ。一筋縄ではいかないポップセンスが反映された「永遠の隙間」、圧倒的な高揚感に溢れた「FLY」などでオーディエンスの興奮をしっかりと引き上げる。本編ラストは、ニューアルバムを象徴する楽曲の一つである「すべてのありふれた光」。光に届きそうで届かない、儚さや虚しさを描くことが多かった田中だが、この曲では、“もしかしたら光に触れることができるかもしれない”という希望の在り処を示している。特に〈特別なきみの声が/聞こえるのさ 届いたのさ〉というラインに触れたときの感動は、これまでのGRAPEVINE にはなかったものだ。「すべてのありふれた光」はまちがいなく、新たな代表曲になる。ライブで聴くことによって、そのことを改めて確信させられた。

 アンコールではまず、名曲「光について」を演奏。「すべてのありふれた光」とのつながりを実感し、再び強く心を揺さぶられる。最後の「KOL(キックアウト ラヴァー)」では、中村佳穂がステージに登場。フェイクを交え、メロディを自由に解釈しながら、〈過去の事は過去にしてしまえ/人生はあっという間だからさ〉というフレーズを描き出す中村。そして、濃密なグルーヴを備えた彼女のボーカルに反応しながら、演奏の熱量をさらに上げていくGRAPEVINE。この生々しいセッションは、今回のツアーの最大の収穫だったと言っていい。

 自らの音楽的スタイルを追求し、唯一無二としか言いようがない音楽世界を描き続けているGRAPEVINEと中村佳穂。両者の個性が気持ち良くぶつかり合う、きわめて意義深いツアーだったと思う。

(文=森朋之/写真=藤井拓)

GRAPVINE オフィシャルサイト

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