なぜ即興ソングはリスナーの心を掴む? R-指定、眉村ちあき……聴き手を魅了するメカニズム

 友人などと遊んでいるとき、どうでもいい話題に限ってやけに冴えた言い回しをしてしまった経験は誰にでもあるはずだ。即興歌は世界各地に古くから存在するが、その多くが遊びにルーツを持つ。日本にも男女が求愛歌を掛け合ってカップル成立を目指す「歌垣(うたがき)」という風習があり、沖縄では「毛遊(もうあし)び」「歌遊(うたあし)び」などと呼ばれていた。秋田音頭では歌い出しの歌詞こそ決まっているものの、夜通しで即興の歌詞を歌い継いでいく遊び方が今も楽しまれている。

 聴き手にとっての即興ソングの楽しさは、「よくそんな言い回しやメロディを思いつくなぁ!」という感銘はもちろんだが、歌い手と一緒に遊んでいるような感覚になれることにもあると思う。ならば突っ込みながら聴くのも大いにアリだ。ジャズのアドリブ演奏と同じく、推敲していない原初のメロディ、原初の言葉だからこそのパワーもある。好不調の波だって当然ある。それをステージ上から「芸」として披露しているR-指定や眉村はどう考えてもすごい。言うまでもないことだが、胆力も技術力も集中力も尋常ではない。

 ちなみに、眉村ちあきは4月から『ビットワールド』(NHK Eテレ)にレギュラー出演する。「番組に寄せられた子供たちからの投稿をもとに楽曲を作っていく」(参照)そうだが、子供の発想との相性はよさそうだし、きっと新たな名曲を生み出してくれるだろう。

■高岡洋詞(たかおか ひろし)
フリー編集者/ライター。主なフィールドは音楽で、CDジャーナル、ミュージック・マガジン、ナタリーほかに寄稿。好きな料理は水炊き。http://www.tapiocahiroshi.com

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