『スピードアップ』リリースインタビュー
noovy、現体制ラストインタビュー Hank卒業後も途切れぬ友情とそれぞれが進むべき道
noovyが、本日3月6日に新シングル『スピードアップ』をリリースした。表題曲は、テレビアニメ『ゾイドワイルド』(MBS・TBS系)のエンディングテーマを担当。台湾出身のバンドがテレビアニメのエンディングテーマに抜擢されるのは今回が初めてのこと。
台湾のオーディションで勝ち上がったメンバーを中心に結成した4人組バンド・noovy。2017年1月に来日してから4人で共同生活を続け、知名度ゼロの状態からライブをこなす中で日本でのメジャーデビューを勝ち取った。しかし、今回のシングルをもって結成当初からリードギタリストとして活動してきたHankが卒業。同シングルには、そんな別れに感じる切なさと、それでも前に進んでいくバンドの今の気持ちが表現されている。
今回のインタビューでは、初めてのアニメタイアップに対する印象をはじめ、それぞれの楽曲に込めた思い、Hankの卒業を控えるバンドのこれまでとこれからについて聞いた。(杉山仁)
今のnoovyが表現された「スピードアップ」
ーー最新シングルの表題曲「スピードアップ」は、台湾出身のバンドとして初めて、日本のTVアニメのエンディングテーマになっていますね。
Shawn:メジャーデビューをしてから、ずっとTVアニメのテーマ曲を担当したいと思っていたので、今回やっと決まったことが本当に嬉しいです。アルバム『LION』のリリースイベントの後に今回の話を聞いて、みんなで喜びました。
――日本のアニメは台湾でも放送されているんですか?
JK:たくさん放送されていますよ!
Shawn:『ワンピース』とか、『NARUTO -ナルト-』とか、『ドラゴンボール』とか――。
――みなさんが好きなアニメや、アニメとの思い出を教えてほしいです。
Hank:僕は『NARUTO -ナルト-』と『ワンピース』。
Mark:『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。
Shawn:僕は『NARUTO -ナルト-』と『ドラゴンボール!』。(「CHA-LA HEAD CHA-LA」を口ずさむ)
Mark:小さい頃は、夕飯を食べながらアニメを観ていたのが思い出です。両親とご飯を食べるというよりも、“アニメと一緒にご飯を食べる”のが、みんな共通する経験だと思います(笑)。台湾の子どもは、そんな風に幼少時代を過ごすんです。
――なるほど、日本の子どもと同じかもしれませんね。
Mark;僕自身、同じ回を何回も観なおして、毎回夢中になっていました。
――では、台湾で一番人気があるTVアニメというと?
全員:『ドラえもん』!
Shawn:『ドラえもん』はみんな知っているアニメのひとつです。
――『ゾイド』シリーズについても、小さい頃から知っていましたか?
Shawn:台湾ではたぶんアニメは放送はされていなかったと思うんですけど、プラモデルは発売していて、僕らも小さい頃は『ゾイド』シリーズのおもちゃで遊んでいました。
Mark:いとこやお兄さんと一緒に遊んでいましたね。
――では今回、「スピードアップ」が『ゾイドワイルド』のエンディングテーマに決まったことは、なおさら嬉しかったんじゃないですか?
Shawn:そうですね。しかも台湾のバンドとして、初めて日本のアニメのテーマ曲を歌えたことも本当に嬉しかったです。
――アニメとのタイアップ曲の場合、アニメ作品にも寄り添いつつ、同時にnoovyの曲にしていく必要があると思います。今回の楽曲を最初に聴いた印象は?
JK:実は「スピードアップ」のメロディは台湾の「健康操」(台湾の小学生のために作られた、日本でのラジオ体操のようなもの)にちょっと似ているんです。『ゾイドワイルド』は小さな子どもたちに人気のアニメなので、そういう意味でも作品に合っている曲なんじゃないかと思いました。伸びやかな雰囲気の曲ですし、「みんなに好きになってもらえる楽曲なのかな」と思います。
――確かに、みんなが好きになれるような間口の広さがあるかもしれません。
Shawn:タイアップが決まったときに、何曲か提案した曲の中で、最終的に選ばれたのが今回の「スピードアップ」だったんですけど、出来上がったものを改めて聴いてみたら、『ゾイドワイルド』のエンディングテーマとしてすごく合っていると思いました。
Mark:『ゾイドワイルド』は戦闘シーンが印象的で、子どもたちは闘うシーンに魅了されていると思うんですけど、一方で、僕たちのように小さい頃からプラモデルで遊んできた世代の人たちにとっても、その頃のことを思い出させてくれる作品だと思うんです。
JK:実際、20歳を過ぎた僕らでも、機械やロボットにワクワクするような感覚というのは、世代を越えて感じることですよね。
Mark:そういう意味では、「スピードアップ」も初心を思い返させてくれる曲なんだと思います。noovyの曲はもともと懐かしい雰囲気のものが多いので、僕らのバンドカラーにも合っているように感じました。
――noovyの楽曲は今では色々な種類のものが増えていますが、もともとは50~60年代のロックンロールからの影響を受けたものが多かったですしね。曲調としては、疾走感のある曲でありつつ、同時に勢い一辺倒ではない切ない雰囲気も込められていて、このサウンドは今のnoovyならではだと思いました。
Shawn:まさに言ってもらった通りで、今回の「スピードアップ」は、歌うときのリズムを早すぎず遅すぎもしない、バランスの取れたものにすることを意識しました。あと、歌い出しのところが決め手になるので、そこもかなり意識して歌っています。もっと前にこの曲を出すことになっていたら、きっと今よりも上手く歌えなかったんじゃないかと思います。
――あと、ライブで観ても感じたことですが、この曲はコーラスもとても印象的です。
Shawn:はい。この曲のコーラスはすごく大事なんです。割合もいつもと比べると多いですね。
Mark:今までの楽曲は、“一生懸命頑張る”ことを意識するものが多かったと思うんですけど、今回の曲は大人っぽい雰囲気なので、ドラムもあえて抑えて演奏していきました。
――ただパワフルに叩くのではなくて、少し引いてバランスを取ることが大事だった、と。みなさんがそれぞれバランスを取り合いながら演奏して、歌うことが大事な曲なんですね。
Hank:僕も何か特定のフレーズよりも、楽曲の全体像を見ながら演奏していきました。
JK:ベースはメリハリや、柔軟なプレイを大切にしました。曲の中の物語に寄り添うように、フレーズの長さもそれぞれ意識して弾いています。この曲は“卒業”“成長”がテーマになっているので、それも意識しながらプレイしていきました。
――Hankさんの卒業タイミングでリリースされるシングルとして、歌詞もアニメだけでなく、今のnoovyに重なるものになっている曲ですね。
Shawn:そうですね。歌詞は、「今の僕たち通りだな」と思うんです。色んなことがあるけれど、〈One more step One more stepを/ずっと繰り返す〉と歌っているように、「一歩ずつ前に進んでいこう」という内容になっていて。「前に向かって踏み出す」ことがテーマになっている曲です。