SACRA MUSIC MIX CD『MiX』は最良のアニクラ入門盤に 本作の魅力を解説

今までなかった技術を駆使した本格的なプレイ

 本作ならではの特徴のひとつが、スクラッチなどの技術を駆使した点。これは従来のアニソンMIX CDには、あまり見られなかったものである。前述の『ラブとポップ』や同じくDJ和が手がけた『J-アニソン神曲祭り』シリーズでも、実はそういったテクニックを用いた繋ぎはあまり多用されておらず、もちろんジャンルごとに通ならニヤリとするような並びではありながらも、比較的曲調やキーの近い楽曲をうまく続けて次から次へとスムーズに曲が流れていくような作品となっている。逆に本作はそのプレイも含めてリスナーを音楽世界に引き込んでいき、DJ MarGenalが主戦場とするアニクラを疑似体験させてくれる、さながら“アニクラ入門編”のような作品。その点については、DJ MarGenal自身も付属のブックレットにて「これを聴くだけで家にいながらでもライブ、アニメソングクラブイベントを体感できる1枚となっています(※以上引用)」と語っている。

 具体例を挙げてご説明しよう。たとえば「irony -season 02- / ClariS」の終盤でスクラッチで魅せて次曲への勢いをさらにつけたうえで、ブチ上がり曲「adrenaline!!! / TrySail」で聴き手のテンションを爆発させたり、逆にスクラッチ一閃だけでアッパーなナンバーからバラード「ミレナリオ / ELISA」へとシーンを切り替えたりといった部分からは彼のフロアへの意識が感じられる。また、「ROCK-mode'18 / LiSA」の1サビ後に「さぁ次は、何の曲?」といった楽曲のラストフレーズを置き、熱くシリアスなナンバー「High Free Spirits / TrySail」へとうまくバトンタッチ。MIXにおける着眼点も、実に素晴らしい。

 加えて、楽曲ごとの関連性もしっかり重視されている点も忘れてはならない。一般のMIX CD同様に楽曲自体のジャンルや雰囲気の近いもの同士でも固めつつ、主題歌として起用された作品同士に関連性を見出して並べている点は、アニソンMIX CDならではのもの。そしてこれもまた、アニクラでオーディエンスを高まらせる仕掛けでもあるのだ。その種明かしは本作のブックレットに掲載されているので、これから本作を手にする人は一度自分でその成り立ちを想像しながら一通り聴いて、それから答え合わせをする……といった楽しみ方も可能だ。

関連記事