「Plastic Love」世界的ヒットに“3つの文脈” tofubeatsカバーリリースを機に解説
そうした音楽好きからの熱い視線と同時期に発展した、フューチャーファンクと呼ばれるインターネット発の音楽ジャンルも見逃せない。主に日本産のシティポップをカットアップし、少し懐かしいフレンチタッチのハウスミュージックに仕立てたポップなサウンドで人気のジャンルだ。ただしその系譜をたどると、2010年代のアンダーグラウンドを代表するマニアックなジャンル、ヴェイパーウェイヴに通じる奇妙な来歴も持っている。このジャンルが人気を獲得するにつれて、元ネタになる日本のシティポップも愛好家を増やしていった。
フューチャーファンクシーンでも「Plastic Love」は評価が高く、韓国のDJ、Night Tempoのリミックス「Plastic Love(Night Tempo 100% Pure Remastered)」はYouTubeで740万回再生に届こうという人気。また、tofubeatsも自身のカバーバージョンがフューチャーファンクとしてリミックスされることを見越して、リリース直前にセルフリミックスを公開している。
つまるところ、「Plastic Love」のヒットには、3つの異なる文脈が絡み合っている。第一には、YouTubeのリコメンドアルゴリズムが生み出す偶発的な出会い。第二には、世界的なレコードブームに伴う日本のシティポップへの注目。第三には、フューチャーファンクなるジャンルの流行。「Plastic Love」はこれらの文脈の結節点にたまたまフィットしたのだ。
そして、なによりも「Plastic Love」はそうした様々な文脈を横断してなお人びとの耳を惹きつけるだけのポテンシャルを持った楽曲だった。tofubeatsらのカバーバージョンと共に、21世紀の新たなスタンダードナンバーの誕生を改めて祝いたい。
■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
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