girl in red、beabadoobee、King Princess…高橋芳朗が選ぶ、注目の女性SSW作品7タイトル

Stella Donnelly『Beware of the Dogs』

 こちらも<Secretly Canadian>より、2017年のEP『Thrush Metal』一発で衆目を引き寄せたオーストラリアはパース出身の26歳、Stella Donnelly。3月8日リリース予定の彼女のデビューアルバム『Beware of the Dogs』から先行トラックの「Old Man」のミュージックビデオが公開になりました。これがシンプルなベッドルームフォークだった『Thrush Metal』のイメージを覆す、抜けのいいバンドサウンドでびっくり。もっとも歌詞はミソジニーや性的暴行を扱っていた『Thrush Metal』の流れを汲むもので、時代錯誤なセクハラおやじに痛烈な一撃を浴びせています。これは2019年の台風の目になるかも?

stella donnelly - Old Man
Claire Laffut『Mojo』

 シャネルのフレグランス「ガブリエル」のキャンペーンに起用されるなどモデルとしても活躍中のベルギー出身(現在の活動拠点はパリ)の24歳、Claire LaffutのデビューEP『Mojo』。ディスコビートの気だるいシンセポップ「Vérité」、トライバルなビートのなかにジャジーなフィーリングをたたえた「Gare du Nord」、Lauryn Hillの影響もうかがわせるフォーキーソウル調の「La Fessée」など、4曲入りながら非常に密度の濃いEPですが、なかでも強烈なインパクトを残すのがニューウェイブ流儀なレゲエ解釈にしびれるタイトルトラックの「Mojo」。まだまだおもしろいアイデアをたくさん持っていそうな気配がびんびんに伝わってくるので、ぜひともこの成果をアルバムにまでつなげていってもらいたいところ。

Claire Laffut - Mojo
Claire Laffut - Gare du Nord
Jessica Pratt『Quiet Signs』

 前作『On Your Own Love Again』から4年ぶりとなるJessica Prattの通算3枚目のニューアルバム『Quiet Signs』が2月8日にリリース決定。先行で「This Time Around」と「Poly Blue」の2曲が公開されていますが、個人的に推したいのは断然後者。相変わらず惚れ惚れするほどに見事な70年代アシッドフォークのオマージュを披露していますが、このコケティッシュなボーカルとボサノバ調のリズムが相俟ったまどろみのなかにいるような音世界はドリームポップ好きはもちろん、往年のソフトロックフリークの皆さんにも強くアピールするはず。今回の<Mexican Summer>への移籍を受けて、こうした彼女のポップな魅力がより前面に出てくることを期待しています。

Jessica Pratt - Poly Blue
Jessica Pratt - This Time Around

■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。

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