「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第43回 『Girls Are Back In Town VOL,2』
フィロソフィーのダンスはダンスフロアを更新してしまったーー2018年の躍進から思うこと
2018年12月16日、ファンクを歌うアイドルグループ・フィロソフィーのダンスの全国ツアー『Girls Are Back In Town VOL,2』の東京公演が品川ステラボールで開催された。約1,500人のファンが会場を埋め、開演前からBGMで鳴り響くナイル・ロジャースのギターのカッティングに合わせてクラップするなど、パーティーの開始を待つファンの昂揚感は早くも最高潮となっていた。
この日は、2018年6月16日に恵比寿LIQUIDROOMで開催された『Girls Are Back In Town VOL,1』(レポートはこちら)に続く、生バンド編成でのライブの第2弾。今回はブラスセクションの3人を投入し、9人編成でのバンドによるライブだった。ギターとキーボード、そしてバンドマスターは、フィロソフィーのダンスの全曲の編曲を担当する宮野弦士。キーボードに福田裕彦、ギターに久次米真吾、ベースに砂山淳一、ドラムに城戸紘志、パーカッションに早藤寿美子。さらにトロンボーンに小池隼人、サックスに藤田淳之介、トランペットに織田祐亮という編成だった。
今回のライブでもっともドープだったのは、中盤に置かれたメドレーコーナーだった。ここには「バッド・パラダイム」「ライク・ア・ゾンビ」「バイタル・テンプテーション」「エポケー・チャンス」といった、フィロソフィーのダンスの作品の中でもファンク濃度が高い楽曲群が配され、再び「バッド・パラダイム」に戻るという構成だった。ファンクの渦である。
特にもっともファンク濃度が高い「バイタル・テンプテーション」のイントロでは、ブラスセクションがステージ前方に来て、メンバーのボーカルとかけあいを繰りひろげた。この日のハイライトと呼んでいい。アンコールの「ジャスト・メモリーズ」と並んで、生のブラスセクションの音色が輝いた瞬間だった。
フィロソフィーのダンスはダンスフロアを更新してしまった。しかも、東京では4桁のキャパシティの会場を埋めるようになるなど、実数が伴っている。この日は、「イッツ・マイ・ターン」がオープニングを飾り、「ライブ・ライフ」が終盤に置かれた。この2曲はシングルとして2018年8月31日にリリースされ、オリコンデイリーシングルランキングで1位、週間ランキングで7位を記録した。
シングル『イッツ・マイ・ターン/ライブ・ライフ』のリリースにあたって、フィロソフィーのダンスは2018年の夏、これまでにないほど多くののリリースイベントを開催した。それはCDというフィジカルメディアへ別れを捧げるという側面も持っていた。
その夏、フィロソフィーのダンスにはもうひとつ大きなトピックがあった。『TOKYO IDOL FESTIVAL2018』において、メインステージである「HOT STAGE」、つまりZepp DiverCty(TOKYO)にフィロソフィーのダンスが立ったのだ。企画コーナーではなく、30分もの枠でフィロソフィーのダンスが単独でライブをしたのは初めてのことだった。2018年8月4日17時からのことだ。
その終了後のバックヤード。私は興奮しきっていたが、フィロソフィーのダンスの楽曲の全作詞を担当するヤマモトショウは「俺がエモくなってもしかたないから、これからのことを考える」と言っていた。
これからのこと。時間軸をひとつのテーマにしたのが、2018年12月16日のアンコール1曲目に歌われた「ヒューリスティック・シティ」だ。
さよならを
好きだって言えるうちに
次の時代いきましょう
わたしが覚えておくから、今を
——フィロソフィーのダンス「ヒューリスティック・シティ」
前回の生バンド編成ライブである『Girls Are Back In Town VOL,1』から半年。フィロソフィーのダンスは「次の時代」へと確実に進んでいる。
「ヒューリスティック・シティ」の歌いだしは奥津マリリ。1番のAメロを日向ハルが歌うのに対して、2番のAメロは十束おとはが歌って佐藤まりあがコーラスを入れる。今となっては忘れがちだが、2015年8月にデビューした頃は、奥津マリリと日向ハルがメインボーカルを担当し、他のメンバーは基本的に歌わないグループだった。プロデューサーの加茂啓太郎が作った当初のコンセプトが変化していったのは、グループ全体のボーカルの底上げがあったからに他ならない。ボーカルグループとしても、フィロソフィーのダンスはエキサイティングな変化を見せてきた。