星野源、『POP VIRUS』の可能性 “イエローミュージック”から“ポップ”への移行が意味するもの

Snail's House - Pixel Galaxy (Official MV)

 Ujico*が参加したことで、本作は海外から注目を集める可能性もある。彼はCDリリースの経験こそないが、Spotifyでは2018年上半期に9番目に多く海外で聴かれた日本人ミュージシャンなのだ。この突破口から、本作はまさにウイルスのように国境を越えて人びとに感染するかもしれない。お茶の間ですっかりおなじみになった星野の音楽が日本の外へも訴求するのかが試される機会と言える。

 そして、日本を抜け出して海外に広まった時点で問われるのは、まさしくこの“イエロー=日本人”の自明性の是非だろう。そこで“イエローミュージック”のコンセプトは練り直されるのか、あるいは本作が志向するような、“ポップ”のコスモポリタンな普遍性へと一足とびに向かうのか?

 星野は『オールナイトニッポン』で、様々なエスニシティの人びとが落書きだらけの地下鉄で踊り出す「Pop Virus」のMVについて、「ニューヨークの地下鉄と言う人が多いが、未来の日本であり、ありえたかもしれない日本だと思っている」という旨を語っていた。彼のビジョンは恐らく、本稿の期待を裏切るような視野狭窄ではないはずだ。だとすれば、まずはこのウイルスを世界に放ってしまうことから始めるべきだろう。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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