髭、“ホーム”のリキッドルームで祝った15周年 音楽への愛溢れるツアーファイナルをレポート
本編は、きっかり2時間。『STRAWBERRY ANNIVERSARY』に収録の10曲は全て、そしてそれ以外もさながら“オールタイムベスト”的な選曲で10曲、合計20曲を披露した5人。アンコールに応えて再びステージに戻ってきた時には、それぞれの手に缶ビールを携えていた。「心のシートベルトを外してしまいました。でも(ホームである)リキッドルームの時くらいは、安全運転やめましょうよ!」と斉藤祐樹(Gt)が言うと場内からは拍手と歓声が起こる。
「もっとすげーすげー」「ハートのキング」の2曲を披露して一旦幕を閉じるも、客席からのアンコールは止まらない。そして迎えたダブルアンコール。
「15年前に髭を始めた頃は、ダブルアンコールをもらえるようなバンドになるとは思っていなかったです。ありがとう。20周年が今から楽しみです。少しでも長くここにいられるように」(須藤)
願いのような言葉を添えてラストに披露したのは代表曲の1つである「虹」。彼らとともに〈虹の向こう側〉までやってきた、この日集えし音楽好き達はやっぱり幸せ者だったな、と確信するような瞬間だった。
ロックが有する憎めなさとロマンチックさ、スイートネス、そして快楽・開放感を常に提供してくれる髭。よく考えたら髭というネーミングからしてファニーでやっぱり笑ってしまう。それでもこんな強力なロックを奏で続ける髭は最強である。バンドが長く続く時代になってきて周年を迎えるバンドも増えた昨今だが、肩の力を抜いて何かを成し遂げるというのは、本当はとても難しいことのはずだ。しかし髭はそれをサラリとやってのける。彼らが「ハートのキング」の中で歌う通り、〈確かなモノなど何もない〉。しかし、こうして15年間バンドを続けてきて、ほどよく肩の力の抜けた大人たちが、「この先も20周年までバンドを続けていけたら」という願望を、目を輝かせながら話している、そのこと自体がもう、ただただひたすらに、無垢なロマンチックさを放つ。今の髭にあるのは、そういうタイプの“浪漫”なのだろう。こんな素敵な音楽に囚われたまま生きている大人たちがいてくれるのなら、きっと人生オールライトだと思えてしまう。15周年を迎えてなお、若い世代からも髭が支持される理由も改めてよくわかる。
この日彼らが演奏した1つ1つの曲を振り返り、噛みしめ、思い出すたびに、何度でも幸せな気持ちになれる。そんな彼らにとっての記念すべき15周年の締め括り、そして2018年最後のライブだった。これでもかというほどの音楽への濃密な愛と、ほんの少しのファニーさで満ち溢れた髭の世界がこれからも末長く続いて行くことを祈りたい。
(取材・文=鈴木絵美里/写真=Wataru Umeda)