aikoのパフォーマンスに溢れる不思議なパワーの源にあるもの 『Love Like Pop vol.20』を見て

 後半に入るとまず弾き語り2曲が用意されている。世界観を一度ここでスケールダウンさせる弾き語りは、彼女の等身大な魅力を伝える。歌うのは”女性の本音を込めた”という「恋人同士」と「ずっと近くに」。ピアノの伴奏と歌声がダイレクトに客席に飛び込んだ。

 そして、再びバンドメンバーを迎えて新作アルバムの1曲目「格好いいな」へ。aiko特有の憂いを帯びたメロディとドラマチックなストリングスが溶け合った名曲だ。ピアノのフレーズの繰り返しがジャブのように効き聴く者の胸を掴み、曲が進むに連れて会場も徐々に聴き入るように手拍子が薄くなってゆく。次の「ドライブモード」を終えたタイミングのMCで「みなさんいろんな日常を過ごして今ここに来ていると思います。嫌な事があったら、わたしたちみんなで受け止めます」と宣言。それが引き金となって観客たちが吹っ切れたのを感じた。

 そこから「未来を拾いに」「恋の涙」「予告」「夢見る隙間」「ハナガサイタ」の5曲を間髪入れず披露。まさにラストスパートだ。aiko自身もここでは自由奔放に動き回って会場を盛り上げた。どの曲も割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こり、ステージのaikoを中心とした熱気の渦が起きていた。アンコールでは「うん。」「向かい合わせ」「milk」を歌唱したが、歌い終わりステージを後にする彼女に向けられた鳴り止まない拍手からこの日はダブルアンコールも起き、ライブは全編通して3時間近くまで及んだ。


 ここまで彼女の様々な面が表れた。元気いっぱいのaiko、落ち着いたaiko、等身大のaiko……。どれも今この時だからこそ出せた姿であろう。そんな彼女の放つパワーに観客たちも勇気付けられ、元気をもらっている。そして、それを生んでいるのがファンの放つエネルギーだ。aikoというアーティストは、ファンから放り込まれたエネルギーを自らのステージに立つパワーに変換し、ライブを作り上げている。冒頭で書いた彼女から発せられる不思議な柔らかいパワーは、もしかしたらaikoを支える人々によってもたらされているのかもしれない。そんなことを感じた一夜であった。

(撮影=岡田貴之)

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

■セットリスト
『Love Like Pop vol.20』
11月30日(金)東京・NHKホール
1.ストロー
2.エナジー
3.あたしのせい
4.くちびる
5.二時頃
6.雨フラシ
7.陽と陰
8.Loveletter
9.瞳
10恋人同士(弾き語り)
11.ずっと近くに(弾き語り)
12.格好いいな
13.ドライブモード
14.未来を拾いに
15.恋の涙
16.予告
17.夢見る瞬間
18.ハナガサイタ

アンコール
19.うん。
20.向かい合わせ
21.milk

Wアンコール
22.あたしの向こう
23.相合傘
24.be master of life

aiko オフィシャルサイト

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