北野創の新譜キュレーション 第6回
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、フランシュシュ……2019年期待の女性声優ユニット5選
また、この7月に結成されたばかりながら話題を集めているのが、実力派が勢揃いした7人組声優ボーカルユニットのKleissis(クレイ・シス)です。メンバーには、『アイカツスターズ』『ガヴリールドロップアウト』『メイドインアビス』『となりの吸血鬼さん』などの人気作で主演を務める若手注目株の富田美憂、この12月にDorothy Little Happyからの卒業を控える髙橋麻里、元HKT48でギルドロップスでも活動する山田麻莉奈、『アイドルマスター シンデレラガールズ』で高森藍子役を演じる金子有希など、すでに経験の豊富な人材が多数。なかには東京藝術大学出身で声楽(ソプラノ)を特技に挙げる元吉有希子という人材もいます。
ホワイトをベースにした清楚かつ神秘的な衣装に身を包んだ彼女たち。楽曲についてもいわゆるアイドルポップ的な華やかさとは一線を画すシリアスなサウンドを志向していて、先日リリースされた2ndシングル『Another Sky Resonance』は、前作『Kleissis Chaos』に続いてこだまさおりが作詞を担当。ストリングスや重厚なギターが荘厳な景色を広げるなか、7人の自由に対する強い意志を秘めた歌声が美しく折り重なっていくドラマティックな一曲になっています。雪原を思わせるシンフォニックなサウンドに乗せて険しくも儚いハーモニーを届けるカップリング曲「逆さまの世界にて」を含め、圧倒的な歌世界を堪能できる一枚です。なお、各メンバーのソロ歌唱バージョンを収録した限定盤も用意されてますが、全員が歌ウマ&それぞれの表現力を発揮しているので延々と聴き比べたくなるはず。マジですごいです。
最後は、そのKleissisのセンターを務める田中有紀が在籍する声優ユニット、NOW ON AIRを紹介します。2016年に行われた新人声優発掘オーディション「キミコエ・オーディション」の合格者6名で結成され、2017年8月にアニメ映画『きみの声をとどけたい』で本格的な声優デビューを果たした彼女たち。映画自体も江ノ島をモデルにした海辺の街を舞台に少女たちの青春模様を爽やかに描いた良作でしたが、そのイメージソング「この声が届きますように」でユニットとしてCDデビュー。続く同映画のエンディング主題歌「キボウノカケラ」では、乃木坂46「制服のマネキン」「君の名は希望」などで知られる杉山勝彦が楽曲提供し、未来への希望に溢れたピュアなユニゾンを聴かせていました。
それ以来、約1年4カ月ぶりのシングルとなる『わたし的Progress』では、自身もシンガー/作詞家として多数のアニメソングに関わってきた結城アイラがサウンドプロデュースに着任。結城の楽曲「ペールムーンがゆれてる」を手がけたことでも知られる高橋 諒(Void_Chords/ONE III NOTES)が作編曲を担当し、これまでCDリリースされたNOW ON AIR楽曲の中でもっとも躍動感に満ちた、前向きな推進力を感じさせるアップチューンに仕上がっています。理想の自分をめざしてしっかりとパフォーマンス力を磨き、デビュー時からのひたむきさを残しながらもプロフェッショナルな歌を気持ちよく届けてくれる彼女たちの「進化」は、2019年もきっと止まらないことでしょう。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。