星野源、アルバムタイトル『POP VIRUS』の真意 ジャケットにも言及した『ANN』を聞いて
また、“ポップウイルス”という言葉は、エディター/ライターの川勝正幸が、かつて使用していたとのこと。川勝正幸著書『ポップ中毒者の手記 約10年分』(1996年)の前書きには、世界中で同じタイミングで同じ音楽が流行るときがあり、その現象には“ポップウイルス”というものがあるとしか考えられない、と書かれているのだそう。星野はアルバムタイトルを思いついた際に「なんか聞いたことあるんだけどって思って。検索してみたんだけど出てこなくって。頭の中でぐるぐる考えて……川勝さんだ! と思って」とエピソードを話す。本書を愛読している星野は、川勝について「あらゆるカルチャーに対し“サブカル”というワードを絶対に使わず、敬意を込めて“ポップカルチャー”と伝えていた」と説明。川勝のポップカルチャーの楽しみ方に影響を受けたという。続けて星野は「今回のアルバムには、僕の中の“これはポップだと思う”、“暗い曲ですが、これもポップだと思うんだよね”っていうものが詰まっていると思う」と力説した。
また、リスナーからのメールには、吉田ユニが手がけた『POP VIRUS』のジャケットデザインについてコメントが多く寄せられた。同ジャケットは、土で心臓を、動脈部分をビビッドな植物で表現したデザインとなっている。星野は吉田のアイデアに「“天才!”と思って。すげぇなって」「美しくて、温かくて、グロテスクなジャケットで……めっちゃかっこいいです」と絶賛。吉田といえば、星野楽曲のジャケットデザインでお馴染みのアートディレクター。皿や文房具などを使用し、人の頭部をデザインした『YELLOW DANCER』や、人のシルエットを形取った水たまりをベースにした『アイデア』など、独創的でエッジの効いたデザインを手がけている。星野は、同ジャケットはすべて完全実写であるとし、吉田の丁寧な仕事ぶりに感心している様子を見せた。
デザインやタイトルから、陰と陽の二面性を感じさせる『POP VIRUS』。「アイデア」の2番パートのように内省的な要素が感じられる作品になるのかもしれない。音楽シーンに刺激を与えた『YELLOW DANCER』から3年。星野が新たに作るポップミュージックとはどのようなものになるのか。今から楽しみでならない。
(文=北村奈都樹)