KICK THE CAN CREW、“楽しさ”を追求したエンターテインメント 16年ぶり日本武道館ワンマン
この日改めて印象的だったのは、自身のキャリアを振り返ることで時間の経過を伝えるような瞬間を見せながらも、同時にそこにノスタルジックな雰囲気を感じないということ。これは再始動以降のKICK THE CAN CREWに共通して感じるもので、「千%」や「住所」を筆頭にした再始動後に生まれた人気曲こそがライブの重要なアンセムとして機能していたことも、そんなメンバーの気持ちを有言実行的に証明するかのようだった。そして何より印象的だったのは、長い年月を経てふたたび集まった3人が、今でも「真剣に、楽しくバカをやることの素晴らしさ」を全力で体現していたこと。日本語ヒップホップの黎明期を支えたレジェンドに連なる形で90年代末~00年代初頭に登場し、シーン自体をより大きな舞台に連れ出した一組として後進に大きな影響を与えながらも、その実自分たちは自らの「楽しい」を追求しているだけだという雰囲気が、全編から伝わってくるようなライブだった。
(文=杉山仁)