TUBE、通算30回目の横浜スタジアム公演 シーンの最前線を走り続けるバンドの記念すべき1日

 毎夏恒例となっているTUBEの横浜スタジアム公演が、今年で通算30回を迎えた。8月25日、『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2018 夏が来た!~YOKOHAMA STADIUM 30 Times~』と題された、記念すべき公演を振り返ろう。

 一昨年は台風の接近、昨年は予期せぬ雷雨と、困難に見舞われながらも、満員の観客を熱狂させた本公演。この日の横浜は、30回という節目を祝福するような快晴だ。列島を悩ませ続けた酷暑は爽やかな風に緩和され、これ以上ないライブ日和になった。デビュー翌年の1986年から、現在まで31年間連続、計128回の単独野外ライブを開催し、約280万人の観客を動員してきた夏の王者、TUBE。そのキャリアのなかでも特別な1日が、晴れないわけがないーーという予感は、幸運なことに的中した。

 横浜スタジアムの最寄駅=みなとみらい線・日本大通り駅の構内から、近隣のコンビニエンスストアに至るまで、BGMはTUBE一色。嫌が応にもライブへの期待は高まり、3万人の“TUBEコール”が、スタジアムに鳴り響く。そのなかで、前田亘輝(Vo)は、気負いもなくふらりと、「アイスキャンディー売り」に扮してステージに登場。さっそく涼と笑いを届け、1曲目から浴衣姿のダンサーたちを従えて「夏だね」を披露した。「Beach Time」ではタオルが回り、早くも盛り上がりは最高潮だ。

 春畑道哉(Gt)が、「30回目の横浜スタジアムライブへ、ようこそいらっしゃいました、TUBEです! 今日はみんなで目一杯盛り上がれるように、たくさん曲を準備してきました」と観客を沸かせ、前田は「今年は30回目のスタジアム。いろんな人からそれを聞くたびに我々メンバーは“ちゃんとしなきゃ”というプレッシャーに駆られています。今までで一番緊張していたよね」と、舞台裏を明かす。続けて、「30回目ということは、1回目があるということで。1回目のオープニングナンバーって、みんな憶えている? 僕たちは忘れていました(笑)」と前田がおどけて見せ、演奏されたのは「夕方チャンス到来」だ。まさに夕暮れが訪れる時間帯、その粋なシチュエーションに、オーディエンスも〈You've gotta chance all right〉のコールで応える。角野秀行のベース、松本玲二のドラムには、初期の名曲を瑞々しく届ける軽快さがある。

 1986年リリースの言わずと知れた大ヒット曲「シーズン・イン・ザ・サン」から、昨年産声をあげ、すでにライブに欠かせない一曲となった「My sunny day」まで一気に駆け抜けると、陽もさらに傾き、風はより涼やかに。そんななかで、角野がウクレレを持ち、「ちょっと座って、水分補給をしましょう」と、観客をクールダウンさせる。ここからは、メンバー四人だけのアコースティック編成で、しっとりとしたステージが展開された。「夏を抱きしめて」に、バーラウンジ風にアレンジされた「青いメロディー」。心地よく聴き入る時間が流れ、その後は、スタジアム恒例の“大噴水バラード”として、前田がずぶ濡れになった「灯台」、そして春畑のエモーショナルなギターが観客の心を震わせたサッカー・Jリーグのオフィシャルテーマソング「J'S THEME 25th ver.」と、バラエティ豊かな楽曲が披露されていく。

 ライブも後半に差し掛かり、ここで大きなサプライズがあった。“湘南サウンド”の大先輩で、TUBEメンバーも敬愛してやまない若大将・加山雄三が、名曲「海 その愛」を熱唱しながら登場したのだ。観客も〈海よ 俺の海よ〉の大合唱で、これに応える。加山は「30回目だと聞いて、思わず駆けつけて来ちゃった」と語り、2011年のホールコンサートツアー『若大将・湘南 FOREVER』でカバーした「湘南My Love」、また加山が14歳の時に作ったという「夜空の星」を共に演奏し、記念すべきライブに花を添えた。

 その後、前田がベスパに乗って再登場し、最新曲「夏が来る!」が届けられる。すでに陽も暮れ、また夏も終わりに差し掛かっているが、そんな中でも、青い空と海が目の前に広がるような、爽快な一曲だ。本編の最後は「恋してムーチョ」で締めくくられ、スタジアムはこれから夏本番を迎えるかのような、熱気に満たされたのだった。

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