ISSA、RIDER CHIPS、上木彩矢 w TAKUYA、三浦大知……『平成ライダーシリーズ』主題歌の変遷

 そこから同シリーズは、『カブト』で主演を務めた水嶋ヒロ、『電王』では佐藤健、『キバ』からは瀬戸康史らを輩出。若手俳優にとっての登竜門となるに伴い、番組ターゲットも子供のみならず、彼らの母親世代へと裾野を広げた。そして、2009年放送の『仮面ライダーディケイド』でシリーズ10周年を迎え、一段落がついたのだろう。次作『仮面ライダーW』の主題歌からは、複数アーティストがコラボするなど、新たな試みも見られるようになった。

上木彩矢 w TAKUYA「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」

上木彩矢 w TAKUYA『W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜』

 『仮面ライダーW』では、桐山漣がハードボイルドな探偵を目指す左翔太郎を演じ、現在はソロアーティストとしても活躍する菅田将暉が、青年・フィリップに扮する。彼らが2人で1人の仮面ライダーに変身することが取り上げられることの多い同作だが、その主題歌に対しても大きな反響があった。それが、上木彩矢と元JUDY AND MARYのTAKUYAがタッグを組んだ「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」だ。

 同楽曲では、『W』で提示された“2人で1人”という新たなライダー像を意識したのか、上木とTAKUYAが”W”ボーカルを担当。上木のメロディアスな歌声に、TAKUYAの力強いラップが挟まれる様子が、飄々としたフィリップと熱血漢な左の関係性を思い起こさせる。『W』にとって、これ以上に似合う楽曲はないだろう。

 そして近年の平成仮面ライダーシリーズは、『ジオウ』で主人公を務める奥野と同様、『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』やミュージカル『テニスの王子様』出身俳優を起用するなど、10代から20代の若年女性層もターゲット化しているようだ。あわせて、TwitterなどのSNSが発達したことで、ファン同士の交流も以前に増して盛んになっている。それに伴うように、2015年放送『仮面ライダーゴースト』の氣志團「我ら思う、故に我ら在り」以降、アーティスト自身が作詞作曲を担当するケースも見られるようになった。

三浦大知「EXCITE」

三浦大知『EXCITE』(通常盤)

 2016年放送の『仮面ライダーエグゼイド』では、三浦大知が「EXCITE」を提供した。その年の『日本レコード大賞』で優秀作品賞を受賞した同楽曲は、Kanata Okajima、UTA、Carpainterが作編曲を担当。なかでもCarpainterは、東京を拠点とするダンスミュージックレーベル<TREKKIE TRAX>を主宰しており、今年7月にはデモ音源公募企画を開くなど、国内ネットレーベルシーンを牽引する気鋭のトラックメイカーだ。

 そんな彼が当時、積極的に制作していた音楽ジャンルが、“フューチャーベース”だ。フューチャーベースは、クラブミュージックにおけるサブジャンルのひとつで、キラキラとしたシンセサイザーや、歌声を切り刻んだカットアップが特徴的だ。「EXCITE」において、同ジャンルの色味は前面に押し出されていないものの、近未来感のあるエレクトロサウンドは、ゲームをモチーフとした『エグゼイド』の世界観にうってつけだ。

 あわせて、三浦は同楽曲について「音楽を届ける側の人間として、作った曲が長く聴かれる環境に置かれるっていうのはすごく素敵なことだと思う」と語っている(参考:三浦大知「EXCITE」オフィシャルインタビュー)。多くの視聴者と長きにわたって寄り添う仮面ライダー作品の主題歌だからこそ、アーティストもとりわけ力を注ぐのかもしれない。

 かねてより平成仮面ライダーシリーズを楽しんできた若い世代も、まもなく家庭を築く時節に差し掛かる。そんな彼らにむけて、今後はさらにプログレッシブな主題歌が制作されると思われる。現在放送中の『ジオウ』、そして今後登場するであろう仮面ライダー作品からも目が離せなさそうだ。

(文=青木皓太)

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