『西でどすこい東でどすこい』東京公演レポート

ラジオやテレビ出演で爪痕残すシンガーソングライター関取花 音楽活動に生みだす“幸福な循環”

 関取花を知ったのは、爆笑問題のラジオ番組『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)を聞いたときだった。番組で流れた彼女の曲も素晴らしかったのだが、「2時間男になれるとしたら何をしますか?」というリスナーからの質問に、関取がすかさず「風俗行きます!」と答えたのがインパクト大だった。しかも、「賢者タイムも含めて2時間がちょうどいい」と付け加えるサービスっぷり。才気溢れるシンガーソングライターでありながら、あけすけで気取らない関取のパーソナリティーに俄然興味が湧き、音源をかたっぱしから聴いてますます彼女のことが好きになった。

 このラジオ以外にも関取はテレビやラジオに頻繁に出演しては爪痕を残してきている。テレビ番組『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などでは“ひがみソングの女王”と紹介され、駅でいちゃつくカップルをネタにした「べつに」という曲が大きな反響を呼んだりもした。だが、ひがみソングと呼べるような一発ネタの曲は、アルバム中せいぜい1〜2曲。あとは感情の揺れを繊細に掬い取った曲ばかりで、その詩情には何度聴いても胸ときめいてしまうのだ。

関取花

 特に筆者が関取を信用できると思ったのは、「もしも僕に」という曲の歌詞を耳にした時だった。〈もしも僕に子供ができたら/どんなことを伝えるだろう〉というテーマのこの曲のサビは、〈努力は大抵報われない/願いはそんなに叶わない/それでもどうか腐らずに/でかい夢見て歩いて行くんだよ〉というもの。J-POPの歌詞は“信じれば夢は叶う”や“明日は必ずやってくるから”といったテンプレが多く、筆者にはそれが無責任な気がしていたから、この一節は実に誠実だと思ったのだ。

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