嵐 二宮和也、木村拓哉との共演で変化遂げる? 映画『検察側の罪人』沖野と最上にも重なる関係
木村拓哉と二宮和也が初共演を果たしたことで大きな注目を集めている映画『検察側の罪人』。これまでも『ファンタスティポ』や『木更津キャッツアイ』など、ジャニーズ俳優がグループを超えて共演する映画は頻繁に作られてきたが、それらと本作が明確に違うことは、彼らの“ジャニーズ”としてのアイドル的な魅力よりも“俳優”としてどこまでできるのか、その力量を最大限に試す作品となっていることだ。
かたや言わずもがなジャニーズを代表するスター、そしてもう一方はクリント・イーストウッドがその演技力を認めた逸材。その2人が熾烈な演技バトルを繰り広げ、しかも極めて硬派な題材にどこまでも硬派に踏み込んでいく。この映画は、日本映画にとっても、そしてジャニーズ事務所全体にとってもひとつのエポックメイキングとなる作品と言っても過言ではないだろう。
劇中で木村が演じているのは東京地検刑事部のエリート検事・最上。そして二宮が演じるのは最上の教えを受け、彼の考える「正義」を継承しようとする若手検事の沖野。過去に起きた事件に翻弄されるままに自身の中にある「正義」が揺れ動く最上に対し、沖野は本来の最上が定義した「正義」の概念と忠実に向き合いながら、彼らの目の前にある殺人事件と対峙していく。
木村が検事という職業を演じるとなれば、否応なしに『HERO』を想起させられてしまう。被害者のために事実の解明を最優先して事件と向き合っていく久利生公平と、自身の思い描くストーリーにすべてを導こうとする最上、そして規範から逸脱したとしても被疑者のために動く沖野。本作と『HERO』で描かれる3人の検事の持つスタンスが明確にバラバラなのは興味深いところだ。
しかしながら、本作で二宮が演じる沖野の“誰かのために動く”というビジョンは久利生と似通った部分を感じる。奇しくも木村が映画版第1作の『HERO』を演じた時は34歳。昨年の夏に本作が撮影された時、二宮はその時の木村と同じ年齢だった。木村にとって久利生という役柄は、キャリアの中で唯一何年にも渡り演じ続けた重要な役柄で、最初のドラマ版が放送された2001年以前と以後では、彼の演技から湧き出る貫禄に大きな変化が生まれたのだ。
本作の劇中で最上の“ストーリー”に疑問を抱きながら、自分の中の正義を見出し、検事としてではなくひとりの人間として成長していく沖野の姿を見ていると、ジャニーズの中で自然と築き上げられてきた木村と二宮の師弟関係や、SMAPの解散によって嵐がジャニーズを背負っていくことになった実情がどことなく頭をよぎる。
パンフレットに掲載されているインタビューの中で二宮は、木村との初共演の喜びを語る際に「このタイミングで」という言葉を使っている。そこには「平成」という時代をリードし続けてきた木村と、この平成最後の年に初めて共演できたという意味合い以上に、次の元号は自分がリードしていかなくてはという意気込みと、ある種の覚悟の現れさえも感じ取れる。