BTS振付師 ソン・ソンドゥク、Hey! Say! JUMP新曲「BANGER NIGHT」にも通ずる手法に迫る
またBTSの初期楽曲にも多用されているが、「BANGER NIGHT」でも有岡大貴らが銃口を向けるような動きなど、武器をモチーフにした動きが多い。これは「ダンスを見ながらでも、曲を聞きながらでも、同じストーリーを聞けるステージを作りたい」(参考:ソン・ソンドゥク振付師が語る防弾少年団、そして「RUN」…“彼らと出会ったのは運がよかった”(Kstyle))というソンドゥク本人のポリシーから、社会からの抑圧や偏見と闘う若者の心理を描いた歌詞をわかりやすく形にしたものといえる。先述の「Not Today」MVでは歌詞に込められた感情がエスカレートするごとに、武器を表現する動きも小型のピストルから大型のショットガンを思わせるものへと変化し、それがパフォーマンスにも絶妙なアグレッシブ感をもたらしている。
またソンドゥクは振付師でありつつ、BTSと同じBig Hitエンターテインメントに所属するパフォーマンスディレクターでもある。BTSのデビュー時には振付だけでなく「表情やジェスチャー、視線(筆者注:のやり方)まで教えました」(参考:ソン・ソンドゥク振付師が語る防弾少年団、そして「RUN」…“彼らと出会ったのは運がよかった”(Kstyle))と語っており、楽曲の世界観を表現するために振付を含むカメラ映え/ライブ映えするパフォーマンスを緻密に計算し構成していることがわかる。だからこそ必然的に、演者側にもアグレッシブな振付をこなせるだけの体力に加えて高い表現力が要求されることになるのだろう。
今回の「BANGER NIGHT」のほか、例えば5月リリースのAKB48「Teacher Teacher」ではGFRIENDらを手がけるパク・ジューが、8月リリースのDa-iCEの最新アルバム『BET』収録曲「Bodyguard」でも、新鋭振付師であるジュノ・リーが振付を担当しており、韓国で活躍する振付師たちの日本進出が散見されるようになった。今後J-POPシーンのダンス面において、さまざまな意味で国境の壁がなくなっていく形が考えられるのは興味深い傾向だ。
■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。