『ウタアシビ2018夏』

城 南海が歌で届ける“人生の機微” 富貴晴美&サラ・オレインと『西郷どん』再現した東京公演レポ

人生の機微を歌う時代を超えたメッセージ

 ふたりを送り出し、「夢のような時間でしたね。自分でも感動しちゃいました」と、しばらく放心状態といった雰囲気だった城は、気を取り直して2009年のデビューシングル表題曲「アイツムギ」を歌った。「デビューから10年、この曲が私を支えてくれました」と、紹介した城。同曲は、川村結花の作詞・作曲で、どこか民謡的なメロディやコード感、そして島唄特有の節回しが当時から話題を集めた。透明感と凛とした佇まいを持った歌声もあいまって、鹿児島県の音楽チャートでは初登場1位を記録した。愛を受けつないでいく様子を伝統工芸品の大島紬と重ねた歌詞からは、「愛加那」とも通じる、絆の強さや包容力が根底に流れていると感じた。

 また、琉球地方に伝わる「イトゥ〜ワイド節」も歌われた。「『イトゥ』は仕事歌です。さとうきびを売り歩くつもりで、私に続いて一緒に歌ってください」と城。また、「ワイド節」は徳之島の歌で、「徳之島は闘牛が盛んでこういう歌が生まれました」と語る。奄美大島に生まれ育ち、子どものころ徳之島に住んでいた時期もあったという、彼女ならではの選曲だろう。曲の後半は、威勢のいい雰囲気で、かけ声を入れたり振り付けもあったりと、会場は一気にお祭りのようなにぎやかさになった。

 「アイツムギ」では愛を歌い、「イトゥ」は仕事の厳しさ、そして「ワイド節」は遊びに興じる楽しさを歌う。これらはつまり、人生の機微であり、生きることの“い・ろ・は”だと言えるだろう。長い人生を謳歌するための、時代を超えたメッセージが、城の歌の根底にはある。彼女のファンは、ある程度の社会的地位を確立した大人世代メインだ。きっと城 南海の楽曲は、人生の残り半分を共に過ごす人生のBGMとして、そうした大人の世代の心に響いている。

(文=榑林史章)

城 南海オフィシャルサイト

 

関連記事