ラブ・エロ・ピースが叫ぶ、ショウガイシャのリアル「伝えないと正直な思いは出てこない」

ラブ・エロ・ピースインタビュー

自由=自分がやりたいことをやれているかどうか 

ーー裕二さんにとって「自由」ってどんなものですか? この記事を読む人の多くも、ショウガイを持っているということがどういうことかわからない人だと思うんです。読者に向けて、「自由」が一つわかりやすい表現になるかと思うんですが。

裕二:僕は親から離れて自由な生活をしたいと思って家を出たのは40年ぐらい前でね。僕には2つぐらい違う兄貴がいて、僕が高校の頃、僕の面倒は兄貴がほとんどやってくれてた。でも兄貴は大学生だったから遊びにも行きたいわけじゃん。親は「出かけてもいいけど、裕二を寝かせてから出かけて」って言うわけよ。

 高校の頃だと、10時頃だからまだまだ寝たくないんで兄貴も板挟みになるわけ。ある日兄貴が俺を寝かせようとしたときに「なんで俺だけ寝なきゃいけないんだ! 俺だって起きていたいんだ! なんで兄貴だけ出かけんだよ!」って言っちゃったわけ。それまで兄貴が俺に合わせてくれているから喧嘩なんてしたことないんだけど、そのとき初めて兄貴が俺を軽くだけど殴った。泣きながら。

 その頃はちょうどショウガイシャ運動が世田谷で盛り上がってた頃で、その輪の中で俺が一番若かったから、若手No.1とか言われて有頂天になってたんだけどね。その当時彼女がいて一緒に暮らしてたんだけど、色々あって同棲は一年半で終わった。それからも俺は夜ショウガイシャ運動の会議に出て、終わって呑みに行って夜中帰って寝て、午後起きてパチンコ行って会議に行ってっていう繰り返しだったんだよね。一方では自分たちが住んでる地域の人たちと付き合って、ショウガイシャのことを理解してもらうんだとか言ってたんだけど、そんな生活だから生活パターンが合わないんだよね。そういう生活を5~6年してるときに、世田谷以外にできた友達がいて、最初はよく呑んだりして付き合っててくれてたんだけど、見るに見かねて俺を怒ってくれてね。「お前いい加減にしろよ! ショウガイシャだからって甘えるのもたいがいにしろ! 働け!」って。

 そのときまで俺、怒られたことなかったんだよね。親もちやほやするだけで。自分も「このままでいいのかな」とか思ってたし、運動やってても自分の言葉じゃなくて先輩たちの言葉を鸚鵡返しにしてる感じだったしね。働けって言われて、自分の周りも家族も俺が働けるなんて考えもしないわけ。だから自分でも「本当に働けるのかな?」っていう感じで諦めてて。そいつに「ゆうじ何かやりたいことないのかよ」って言われて、当時介助と結構手の込んだカレーを作ってて「カレー屋をやりたい」って言っちゃったんだよね。そしたらその友達が「面白ぇじゃん」って。自分たちのイベントをやりたくて、ライブハウスには食べ物と飲み物が必要だから「裕二用意しろ、責任持ってやれ」と言われて始まったのがゆうじ屋。

 自由って本当に自分がやりたいことをやれているかどうかだと思う。俺はパチンコとか呑み屋とか行ってて、そのときは楽しいけど自分の中で本当に納得してなかったもんね。自分が納得できるためには、色んな人から怒られたり影響を受けたりしないとできないんだよね。ショウガイシャの場合経験が少ないから、余計そういうところは大きいかもしれないけど、健常者もショウガイシャもないような気がする。ただ、圧倒的にショウガイシャの方が世の中に出て行くチャンスが少ない。だから今でも自由とか、自分が納得できるまでまだまだですね。納得して死にたいからね。

ーー最後に、読者に向けて何か伝えたいことがあれば。

裕二:ショウガイシャが世の中に出て行くチャンスが圧倒的に奪われてるって言ったじゃん。それって周りが諦めてるんだよね。親も養護学校の先生も、施設の職員も「こんなもんだろう」って。僕もラブ・エロ・ピースを始めて、自分で自分の歌を聴いて最初は「なんだこりゃ?」って。無理してやってるのも「健常者を追いかけてるだけなのかな?」って思って、やり始めて2年ぐらい経ったときに「やめた方がいいのかな?」ってマジで迷ってたんだよ。昔から一緒にライブ活動をやってた30年ぐらいの付き合いの奴がいるんだけど、そいつが「裕二さんが好きだったら続ければ? 好きなことは続けた方がいいと思うよ」って言ってくれて。

 好きだからね、音楽。どうせ続けるんだったら自分の歌のイメージに少しでも近づけたいと思って、たまたまボイストレーニングの先生と知り合いになって、やってみようと思って続けて一年ぐらい経つけど、声が大きく出るようになった。多分今も細かいところはわかりにくいんだろうけど、声が響くようになったんだよ。あそこでボイトレをやらなかったら、たぶんCDを作ろうなんていう思いにはならなかったかもしれない。だから諦めない! 周りの仲間が諦めないでいてくれるから生きてるんだと思います。だからこういう姿を見て欲しいんだよね。色んなショウガイシャも健常者も、やればできるんだっていうことを少しでもわかってくれれば最高ですね。

(取材・文=ISHIYA)

■ラブ・エロ・ピース
2013年、世田谷の千歳烏山で行われている路上演劇祭でデビュー。当初、女装飲んだくれオヤジ菅原ニョキと、お邪魔ん裕二のフォークパンクユニットとして、スタート。cafe ゆうじ屋をホームグランドに、イベント等に出没。 2015年、キーボードのヨーコが「私にもやらせろ」といいながら加わる。
2016年7月、津久井やまゆり園事件が起きる。その衝撃から、より精力的に活動を展開。 2017年10月に刊行された書籍「生きている!殺すな~やまゆり園事件の起きる時代に生きる障害者たち~」の付属CDに、代表曲「死んでない 殺すな」を収録。
このレコーディングを契機に、ギターのしぶしぶのノリー、ボイス・コーラスのボイスふみが正式参加。その後、パーカッションのお染のマサトも加入。メンバーはさらに増殖中。
ストリート、ライブハウス、カフェ、ところかまわず叫び続ける。やまゆり園事件を忘れるな!

■リリース情報
『ラブ・エロ・ピース』
8月8日(水)発売 
2,300円+税

<収録曲>
1. かまわれたい
2. ケーキ売り
3. ふつう
4. 同級生
5. 何のために
6. ラブ・エロ・ピース
7. 狼

【メンバー構成】
女装飲んだくれオヤジ菅原ニョキ(Vocal, Acoustic Guitar)
お邪魔ん裕二(Vocal)
嵐を呼ぶキーボードヨーコ(Keyboard) 
しぶしぶのノリー(Electric Guitar)
ボイスふみ(Chorus) 

【ゲストの仲間】
ab3(Bass)
joji kurosawa(Drums, Cajón)
ladyeria(Sax)
石塚弓子(Chorus)

■ライブ情報
ラブ・エロ・ピース 1st FULL ALBUM『ラブ・エロ・ピース』リリースパーティー
7月28日(土)新宿 Motion
OPEN18:00/START19:00
前売¥2,500/当日¥3,000(ドリンク代別途必要)

<出演>
◎FUCKER
◎羊歯明神(遠藤ミチロウ+石塚俊明+山本久土+関根真理)
◎ラブ・エロ・ピース
チケット予約:motion@motion-web.jp
新宿Motion
新宿区歌舞伎町2-45-2 ジャストビル5F
TEL:03-3209-1278

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