『Enjoy』インタビュー

大原櫻子が語る、デビュー5周年の充実 「全曲を通して、いまの私らしく歌おうと思った」

 大原櫻子が3rdアルバム『Enjoy』をリリースする。2ndアルバム『V(ビバ)』以来2年ぶりとなる本作には、「マイ フェイバリット ジュエル」(作詞・作曲:秦 基博)、「さよなら」(作詞・作曲:水野良樹)など様々なアーティストとのコラボレーションシングルを収録。さらに切なくも愛らしい恋愛感情を描いたポップチューン「ツキアカリ」、シリアスなメッセージ性を備えたロックナンバー「energy」、高橋久美子が作詞、水野良樹が作曲を担当した「夏のおいしいところだけ」などカラフルな楽曲が収められている。

 「ファンの方が聴きたい曲と自分自身がやりたいことを詰められた」という彼女は、デビュー5周年を迎え、シンガー/アーティストしてさらなる充実期に突入しつつあるようだ。(森朋之)

「ダンスが加わることで、視覚でも世界観を感じてもらえる」


ーー2年ぶりとなるニューアルバム『Enjoy』がリリースされます。前作『V(ビバ)』以降、初の日本武道館公演を開催、さらにドラマ、舞台にも出演するなど濃密な活動が続いていましたが、2年前と比べていちばん変わったのはどんなところですか?

大原櫻子(以下、大原):そうですね……あまり変わってないかも(笑)。ただ、意志は強くなりましたね。「私はこう思います。みなさんはどうですか?」という話も以前よりできるようになったので。あとは挑戦心かな。失敗を恐れずに挑戦する心を持てるようになったかなって。それは今回のアルバムにも詰まっていると思います。

ーーアルバムの制作に関しては、どんなテーマがあったんですか?

大原:前回の『V(ビバ)』は20代になって初めてのアルバムで、大人っぽさを意識していたんですけど、今回はこれまでの自分のことを客観的に見て「こういう曲を入れたらファンのみなさんは喜んでくれるかな」みたいなことを考えてましたね。それプラス、自分がやりたいことにも挑戦させてもらって。秦さんに作っていだいた「マイ フェイバリット ジュエル」、水野さんに提供していただいた「さよなら」もそうですけど、シングルはミディアム、バラード系が多かったから、明るい曲を入れたいという気持ちもありました。夏の発売だし、はっちゃけるのもいいかなって(笑)。

ーー冒頭(「one」)からエレクトロテイストの楽曲で始まって。

大原:そう、ダンスチューンで始まるんですよね。もともとダンスが好きだし、ずっと「踊れる曲がほしいよね」という話をしていて。リード曲の「ツキアカリ」のMVも、サビは全部ダンスなんです。歌だけで表現することも続けていきたいんだけど、そこにダンスが加わることで、視覚でも世界観を感じてもらえると思います。

ーー「ツキアカリ」はアルバムの軸になっている楽曲?

大原:軸というより、明るくてポップな曲をリードにしたいなって。すごく明るくてポップな曲なので、初めて私のアルバムを聴いてくれる方も、ずっと応援してくれてる方も馴染みやすいと思うんです。リード曲がダンスチューンだったら、「あれ? 櫻子ちゃん、どこにいっちゃうの?」ってなっちゃうかもしれないじゃないですか(笑)。アルバムの入り口は“自分らしさ”を感じられる曲のほうがいいので。

ーー歌詞にも“らしさ”が出てますよね。

大原:そう思います。歌詞はいであやかさんが書いてくださったんですが、2曲目の「泣きたいくらい」(9thシングル)からストーリーが続いているような印象もあって。付き合って何年か経って、女の子が「この距離感でいいのかな?」と迷っているというのかな。2曲とも等身大で表現できました。全曲を通して、いまの私らしく歌おうと思っていたので。

ーー「energy」はエッジの効いたロックナンバー。〈大人ってただ偉そうな子供なの?〉で始まる歌詞も強烈だな、と。

大原:1stアルバム(『HAPPY』)に入っている「READY GO!」と同じように「ライブで煽れるようなカッコいい曲がもう1曲ほしいね」っていう話からできたのが「energy」なんです。大人への反骨精神を歌わせてもらいました(笑)。

ーーそういう内容の歌も等身大で歌える?

大原:そうですね。やさぐれている曲というか(笑)、心の叫びみたいな歌詞もぜんぜん自分とかけ離れていないと思っているので。この歌詞に込められている精神、価値観もすごくわかるし、歌いやすかったです。「なんなんだよ!」みたいな話をすることもありますからね、普段。背景にはいまの社会から感じることも含まれているんですけど、そういう思いを込めていることが伝わったらいいなということは小名川さん(作詞・作曲を手がけている小名川高弘)とも話していて。恋愛ソング、応援ソングも大好きですけど、“いま歌わなくちゃいけない”と思える曲を収録できたのは嬉しいですね。

ーー「夏のおいしいところだけ」は、作詞を高橋久美子さん、作曲を水野良樹さんが手がけたナンバー。〈わがままは 自由の始まりね〉という女子のリアルな気持ちが表現された、かわいらしい曲ですよね。

大原:私もすごく気に入ってます。水野さんがかわいい曲を書いてくれて、高橋さんの歌詞の世界観、言葉のチョイスも大好きです。水野さんが送ってくれたデモに「夏のデモ」という仮タイトルが付いていて、メロディを聴いたときも「夏のライブに合いそうだな」と思ったので、高橋さんにも「夏をテーマにした歌詞にしてください」とお願いしました。とにかく主人公の女性がかわいいんですよ。いちばん好きなのは〈かき氷はいつの間にか/とけて赤い水になる/巻き戻しできない/だからちゃんと生きよう〉というところ。情景で感情を伝えているんだけど、表現がすごく上手で、かわいらしくて。レコーディングではずっとニコニコしながら歌うことを心がけていたんですが、本当に楽しくて。高橋さんとはまたご一緒したいなって思いました。

ーー「甘えてしまうんだよ」はアコギと歌によるバラード。

大原:ひと聴き惚れというか、デモを聴いたときに速攻で「この曲、入れたいです」って言いましたね。これまでにもバラードは歌ってきましたけど、ギターと歌だけで勝負する曲は初めてだし、すごく新鮮だったので。切なさとかわいさが両方入った歌詞も素敵ですよね。

ーー大原さん、ギターのイメージも強いですからね。

大原:もともとはピアノのほうが馴染みがあって、ギターは(映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の)役作りために始めたので、得意とは言えないんですけどね(笑)。ただ、少しずつ弾けるようになってるし、ギターも表現の一部になってきたのかなって。楽器自体が好きだし、表現の幅を広げていきたいという気持ちはありますね。

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