大原櫻子が迎えた、シンガーとしてのターニングポイント「年齢を重ねても歌える歌だと思う」

大原櫻子が迎えたターニングポイント

 大原櫻子が2017年3作目のシングル『さよなら』をリリース。秦 基博の作詞・作曲による「マイ フェイバリット ジュエル」に続く本作の表題曲は、水野良樹(いきものがかり)のプロデュースによる極上の失恋バラードに仕上がっている。「悲しさではなく、優しさが伝わるように歌いたかった」という彼女にとっても、ひとつのターニングポイントとなる楽曲だと言っていいだろう。「さよなら」の制作、水野とのやりとり、そして、シンガー/女優としての個性を確立した2017年などについて語ってもらった。(森朋之)

懐かしさは人を感動させる

ーーまずは10月から11月にかけて行われたツアー『大原櫻子 4th TOUR 2017 AUTUMN 〜ACCECHERRY BOX〜』の手ごたえを教えてもらえますか?

大原櫻子(以下、大原):すごく楽しんでやらせてもらいました。去年のツアーは武道館やホールだったから、今回のZepp(Zepp Sapporo、Zepp Namba、Zepp Tokyo、Zepp Nagoya)はお客さんとの距離が近く感じて。みなさんの表情もよく見えるし、レスポンスもしっかり聞こえて、スタンディングの会場の良さってやっぱりあるなと思いましたね。あと、いい意味で力を抜いてやれているんですよ。そのぶん、1曲1曲の世界観を丁寧に届けられるようになってきた気がします。

ーーリラックスしてステージに立てている理由はどこにあると思いますか?

大原:まず、お客さんに優しい人が多いんですよ。だから「歌詞を間違えてしまったら、みなさんも一緒に歌って」と甘えさせてもらっているというか(笑)。もうひとつは「カッコつけることはしなくていい」ということかな。お芝居の役によって色々なキャラクターだったりするんですけど、そのなかで「カッコつけなくていい」と思えるようになったので。

ーー女優としての活動がライブにも良い影響を与えている、と。そして11月22日には8枚目のシングル『さよなら』がリリースされます。前作の表題曲「マイ フェイバリット ジュエル」は秦 基博さんの楽曲でしたが、今回はいきものがかりの水野良樹さんの作詞・作曲。コラボレーションが続いてますね。

大原:そうなんですよね。いろいろなアーティストの方とコラボさせていだけるのはすごく楽しいし、そのたびに自分の引き出しが増える感じもあって。水野さんは私のライブや舞台も観に来てくれていたし、音楽以外の部分も知ったうえで、この曲を書いてくださったんだなと思っていて。それがすごく嬉しいですね。

ーー「さよなら」はドラマティックなバラードナンバー。大原さんにとって初めての失恋バラードですね。

大原:最初に聴いたときは「大人っぽい曲が来た!」と思ったと同時に「いやいや、自分のリアル(年齢)を考えたら、こういう曲を歌うべきだな」とも感じて。いままではラブソング自体もそんなに歌っていなかったし、あっても“友達同士のかわいい恋愛”を歌うことが多かったんですよね。「さよなら」みたいな失恋ソングは本当に初めてだし、いろいろなことに気付かせてもらった感じもあります。

ーー水野さんと曲の内容について打ち合わせしたんですか?

大原:してないんですよ。「櫻子ちゃん(大原)のなかで歌ってみたいテーマはある?」と聞いてもらったんですけど、私としては「水野さんの曲を歌いたい」という感じだったので。ひとつだけ「懐かしさを匂わせる曲が歌いたいです」ということだけはお伝えしました。舞台(『わたしは真悟』)をやっているときに「懐かしさは人を感動させるんだな」ということを感じていたので。あと「いきものがかりの曲のなかでは何が好き?」と聞かれたので「『帰りたくなったよ』が好きです」と答えたら「あ、なるほどね。OK!」って。

ーー確かに「さよなら」のメロディからも懐かしさ、ノスタルジックな雰囲気が伝わってきました。

大原:そうそう。このメロディを初めて聴いたときも「絶対、いい曲になる!」って思って。そのときは「応援歌になるのかな」と思っていたんですけど、まさかの失恋ソングで。水野さんのいままでの作品のイメージとも違うし、私のイメージにもなかった楽曲だったので、最初はちょっと意外だったんですよ。でも、すぐに大好きな曲になったし、いまは「一生大事にしたい」と思っていて。この曲はたぶん、もっと大人になって、年齢を重ねても歌える歌だと思うんです。胸を張って「いい曲です」と言えるし、聴いてくれるみなさんの心のなかにずっと残る歌にしなくちゃいけないという気持ちもありますね。

ーー実際に歌ってみたときはどう感じました?

大原:本番のレコーディングの前に2回ほど仮のレコーディングをさせてもらったんですが、いちばん最初は歌い方がぜんぜん違っていたんです。簡単に言うと、もっと暗く歌っていたんですよね。失恋ソングだし、歌いながら泣きそうになるような感じで。でも、水野さんから「もっと笑顔で歌ってほしい」と言われて。ニコニコではないけど、前向きな主人公として表現してほしいって。

ーー「さよなら」の主人公の女性は、ただ悲しんでいるだけではなくて、未来に向かって進もうとしていますからね。

大原:そうなんですよね。あとは「失恋した直後の人が聴いても、失恋から半年くらい経って落ち着いてきた人が聴いても、20年前に大失恋を経験した人が聴いても共感できる曲にしたい」ということも言われて。そこから歌い方も変わりました。悲しさをワーッと叫ぶのではなくて、ポジティブな恋愛ソングにしようって。

ーー前回のインタビューで大原さんは「自分の音楽には優しさがあってほしい」とコメントしていましたが、そのスタンスは「さよなら」にも反映されている?

大原:まさにそうだと思います。レコーディングでも“悲しい”ではなくて、それを“優しい”に変えたいと思って歌っていたので。「さよなら」はサビ(〈さよなら あなたはわたしのすべてでした〜〉)から始まるんですけど、Aメロの〈ひとり見上げる東京の空〉のところを暗く歌ってしまうと、「聴きたくないな」と感じる方もいらっしゃるんじゃないかなって。そのフレーズを優しく歌うことで、聴いてくれる方のなかで明るい未来が見えてきたらいいなと思ったんですよね。あと、「さよなら」の裏には“ありがとう”があると思っていて。失恋したときに「じゃあ、バイバイ」ではなくて、「いい恋愛をさせてくれてありがとう」と言える女性って、素敵だなって。私自身もそういう女性になれたらいいなと思うしーーできれば失恋はしたくないですけど(笑)ーー聴いてくれた方が同じように感じてくれたら素晴らしいですよね。

ーーすごく深い話ですね、それは。水野さんとしても思いが強い曲なんでしょうね。

大原:そうだと思います。レコーディングの前にも長文のメールを送ってくれて、そのときも「熱い思いをもらった」という感じがあって。責任を持って歌わないといけないという気持ちになりましたね。やっぱり、水野さんが優しさの塊のような方だからこういう曲になるんだと思います。秦さんのときも同じように感じたんですけど、曲を聴けばその人がわかるなって。

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