10周年&梅津卒業ワンマン『サンキュー梅ックス』ライブレポート

忘れらんねえよはすべてを乗り越え、前に進み続ける 現体制ラストライブを見て

 終わりも近づいた頃、28曲目に披露されたのは、2013年にリリースした3rdシングルの表題曲「この高鳴りをなんと呼ぶ」。バンドで音楽を鳴らす喜びや楽しさを純粋に描き出したような楽曲だ。柴田は曲中に「俺、歌い続けるからな! 梅津くんはベースを弾き続けるからな!」と叫び、梅津もまた、歌詞を口ずさみながらベースを弾いていた。

 そして本編最後は「明日とかどうでもいい」。この日をもって、梅津が脱退し、忘れらんねえよは明日から柴田ひとりになる。そんな状況で聴く「明日とかどうでもいい」は、ただただ胸に迫るものがあった。

 アンコールで再びステージに出てきた4人。「世界であんたはいちばん綺麗だ」を披露したあと、柴田は涙まじりの声で、下北沢の小さなライブハウスから、このZepp Tokyoのステージまで登ってきたことを振り返った。「俺はあの時、『バンドワゴン』を希望を込めて歌った。でも本当のことになった。ロックンロールって嘘をつかないんだな。ロックンロールは本当のことを歌う歌なんだ」「自分のことが大嫌いだけど大好きだからロックバンドが好きなんだよな」。そんな言葉を置いてから演奏されたのは「バンドワゴン」。どんなことが降りかかったとしても、バンドワゴンは止まることなく次の目的地に向かって進んで行く。動き出したらもう後には戻らない。それは、これまで一緒にバンドをやってきた梅津との日々を讃えると同時に、柴田のこれからの決意表明のようにも響いた。

 「ありがとな。面白かったな。……よし、終わろうか」。名残惜しそうにMCを続けながらも、腹をくくる柴田。「忘れらんねえよ」では会場のライトが落ち、観客のスマートフォンのライトが左右に揺れる。途中4人は楽器を鳴らすのを止め、ステージ中央に集まって肩を組みながら、観客の大合唱をただ楽しそうな笑顔で聞いていた。それは、真のロックバンドにしか生み出せない美しい光景だった。

 正真正銘ラストの曲は「まだ知らない世界」。長い長いアウトロが響き、タナカ、マシータが梅津とハグを交わしてから退場。そして柴田も、「梅津ありがとう!」と叫んでから、梅津を抱きしめ、ステージをあとにした。梅津はひとり残ってベースをかき鳴らし、最後に深いお辞儀をしてからステージを去った。ベースの残響のなか、忘れらんねえよの現体制最後のライブが終了した。

 「みなさん、忘れらんねえよは好きですか? 俺は忘れらんねえよが大好きです!!」。柴田はオープニングにステージに立つなり、こう叫んでライブを始めた。

 何も持っていない自分が大きな大きな夢を見る。柴田にとって、そのためのたったひとつの方法が忘れらんねえよというバンドなのだろう。だから、解散も活動休止もすることなく、ひとりになっても柴田は忘れらんねえよを名乗り続けることを選んだ。

 7月9日、東京・渋谷CLUB QUATTROにて、新体制初ライブ『YouTuberになればモテると聞いた』が開催される。忘れらんねえよは、これからも前に進み続けるしかないのだ。

(取材・文=若田悠希/撮影=岩佐 篤樹)

■セットリスト
忘れらんねえよ 10周年&梅津卒業ワンマン『サンキュー梅ックス』
2018年5月1日(火) Zepp Tokyo

1. ゾンビブルース
2. 僕らチェンジザワールド
3. あんたなんだ
4. この街には君がいない
5. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
6. 美しいよ
7. 中年かまってちゃん
8. 体内ラブ~大腸と小腸の恋~
9. スマートなんかなりたくない
10. バレーコードは握れない
11. 俺たちの日々
12. うつくしいひと
13. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
14. 紙がない
15. 俺の中のドラゴン
16. バンドやろうぜ
17. 北極星
18. CからはじまるABC
19. ハナノユメ
20. サンキューアイラブユー世界
21. 花火
22. 俺よ届け
23. 愛の無能
24. ばかばっか
25. 寝てらんねえよ
26. 犬にしてくれ
27. いいひとどまり
28. この高鳴りをなんと呼ぶ
29. ばかもののすべて
30. 明日とかどうでもいい
<Encore>
31. 世界であんたはいちばん綺麗だ
32. バンドワゴン
33. 忘れらんねえよ
34. まだ知らない世界

忘れらんねえよオフィシャルサイト

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