松村早希子の「美女を浴びたい」
のんは、この世界の希望だーーのんシガレッツ1stワンマンライブで見せたロックスターの輝き
「のん」としてのライブデビューとなった2017年の『WORLD HAPPINESS』、バックに高橋幸宏と小原礼と鈴木慶一を従えサディスティック・ミカ・バンド「タイムマシンにおねがい」を披露したのんちゃん。その会場だけで発売された『オヒロメ・パック』(名刺やカセットテープなどを収めた限定品。その後EP盤や配信リリースも行われた)には「タイムマシンにおねがい」とRCサクセション「I LIKE YOU」のカバーが収録されました。
中学生バンドでギターを弾きながら矢野顕子・忌野清志郎の研究に勤しんだ彼女が、矢野顕子や仲井戸“CHABO”麗市、高橋幸宏、鈴木慶一、尾崎亜美、大友良英とSachikoM(「あまちゃん」ファン感涙!)、屋敷豪太、高野寛、土屋昌巳、佐橋佳幸……(敬称略)、もう書ききれないほど沢山の「スーパーヒーローズ」と作った初めてのアルバムが発売されました(アルバムには”Special Thanks to 忌野清志郎”と記されています)。
そしてアルバム発売日前日に渋谷クラブクアトロで開催された、のんちゃん率いるバンド・のんシガレッツの1stワンマンライブ、『のんシガレッツ / ファースト・ライブ』。
オープニング映像が終わり、今まさにのんシガレッツが登場しようとするその一瞬、ステージにかかった幕に大きくのんちゃんのシルエットが映りました。満員の客席は開演前からすでにのんちゃんコールや拍手が起こり、会場内は溢れる期待で充満して今にもはち切れそう。幕が落ち、スーパーヒーローに扮したのんちゃんがマントを翻し現れた瞬間、場内は大熱狂。スタートからもういきなり、映画のようなカッコ良さ。赤いテレキャスターを掻き鳴らす姿は、とても初ワンマンライブとは思えない、堂々としたロックスターぶりでした。
長い手足とキラキラの瞳は、後方の観客までまっすぐに届く輝き。初めてテレビで彼女の姿を見た時に、こんなに眼がキラキラした人が存在するのか…!と、衝撃を受けたことを思い出しました。
のんちゃんが「一人目のスーパーヒーローです!」と呼び込んだ高野寛さん、そして「二人目のスーパーヒーロー」には大友良英さんが登場。高野寛さんとは彼の提供したのんちゃんのデビュー曲「スーパーヒーローになりたい」と、そのシングルのカップリングに収められた「タイムマシンにおねがい」を演奏。高野スーパーヒーローの蹴り上げた足の長さと貴公子的エレガンスにときめきました。
大友良英さんとは「おやすみ」「RUN!!!」を演奏。「この近くの放送局(NHK)のドラマでご一緒しましたね」との発言に観客は大盛り上がり。そしてこの日誰よりも暴れていたギターソロで誰にも止められないクレイジーさを放出し、ガーンと演奏してシュッと去る大友スーパーヒーローのカッコ良さに痺れました。
「へーんなのっ」(のん初めての自作曲)「RUN!!!」などのパンクな楽曲では、自分の奥底から湧き上がってきた衝動をぶつけるような激しさを感じさせ、尾崎亜美さん作のバラード「スケッチブック」では、静かな情熱が会場内に水面の波紋のように広がり、アルバムのラストを飾る大友良英さん作「おやすみ」ではちいさな子供を寝かしつける母親のような温かさ。
多くの大物ミュージシャンが参加したアルバムですが、奏でられる音楽の全てが、自然にのんちゃんの中から生まれてきたものだと思える表現力の幅広さ、さすが女優!
この日初めて聴いた「スケッチブック」。のんちゃんが歌うことで目の前に情景が広がってゆき、初めて聴くのにずっと昔から知っているような懐かしさに胸打たれ涙した直後、登場した大友良英さんが「本当に良かったよねえ、今の歌! 俺、泣きそうになっちゃったよ」と語り、強く頷きました。
アンコールは1曲リクエスト。客席から色々な曲名が飛び交う中、キリンジ「エイリアンズ」の声が飛ぶも、「あー!『エイリアンズ』練習してないんだよなー」と、心底悔しそうなのんちゃんでした。
自由に生きることはとても難しくて、 それでも大人になっても自由でい続けようとする人がいる、それだけで私たちは勇気付けられるのです。だからみんなが応援したくなってしまう。そんな女の子がこの同じ時代に存在しているというだけで、奇跡のようだと思います。