“可愛い”&“未完成型”の日本アイドルはアジアで成功する? AKB48グループの戦略から考える

 アイドル超大国といえるインドネシアはやはり外せない。インドネシアのアイドルは数も多く、また韓国型アイドルの影響もあるが、かなり独自の進化を遂げていて全貌がつかみにくい深さを持つ。イメージとしては、日本の70年代の音楽番組をみているようなご当地演歌(?)とアイドルの混在があって、懐かしい気分にもなる。比較的新しい日本型のかわいい系アイドルとしては、少女コンプレックス(Shojo complex)に注目している。もちろんJKT48の人気の高さは特筆に値するだろう。

SAKUR4 from SHOJO COMPLEX「Justice Knight」

 中国は先ほども書いたが、日本型アイドルの潜在的市場としてはいまだにダントツに有望である。AKB48グループから「離反」したSNH48グループはいまだに健在だ。人気も手堅いものがある。ただし中国全土で認知度が高いかどうかは別問題で、まだこれからというのが正直なところではないか。個人的に日本型のアイドルとしては、Idol Schoolに注目している。ハウス食品(中国)のイメージガールにも選ばれるなど日本との結びつきは強い。だが、中国は文化統制的側面も強くあり、日本のようにライブアイドルが群生して裾野を広げていくようには思えないのが難点かもしれない。

Idol School【畢業歌】官方完整版 MV

 ユメオイ少女ら数組のアイドルたちが数年前にフェスを行ったモンゴル。大相撲での結びつきはもちろん、経済的な関係も深めているが、まだ日本型アイドルでは未開のフロンティアである。これからの有望な市場のひとつかもしれない。

 フィリピン、マレーシアなども独自の多様なアイドル市場を持っており、日本型アイドルの育つ余地は十分にあるだろう。いまはまだ点と点として各国に偏在しているだけだが、韓国型アイドルのようにSNSなどでネットワークが形成されれば、アジア全域に日本型アイドルが一気にブレイクする可能性はある。日本型アイドルがアジアの人たちの「嗜好」と異なるという証拠はないからだ。問題は全体的な戦略の不在に尽きるだろう。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは北原里英、欅坂46、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、西恵利香、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICEら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる