『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』レポート(その2)

欅坂46は壁を越えて進み続けるーーデビュー2周年ライブで手にした“強さと自信”

 欅坂46がCDデビュー2周年を記念した単独ライブ『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』を2018年4月6日〜8日の3日間、武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナにて行った。2016年4月6日に『サイレントマジョリティー』でCDデビューを果たした欅坂46は、昨年同日に国立代々木競技場第一体育館でデビュー1周年記念ライブを敢行。今年は3日間にわたり、計2万4000人を動員する盛況ぶりをみせた。

 漢字欅(欅坂46)が本格的な単独ライブを行うのは、昨年8月に実施された初の全国アリーナツアー『欅坂46 全国ツアー2017「真っ白なものは汚したくなる」』以来約7カ月ぶり。けやき坂46(ひらがなけやき)を除く漢字欅のみでの本格的な単独公演はこれが初めてとなる。そもそも漢字欅は今年1月31日、2月1日に日本武道館で自身初の本格的な単独ライブを行う予定だった。しかし、開催を断念し、代わりにけやき坂46が1月30日の単独公演含め3日連続でライブを敢行。この突然課せられた重圧をけやき坂46は見事に跳ね除け、3公演を大成功のうちに終えグループの評価を上げる絶好の機会となった。

 この武道館キャンセルを経て、今年のアニバーサリーライブは漢字欅のみで敢行することとなったが、同時に平手の不参加も明らかに。さらにライブ直前には志田愛佳も欠席することが発表され、CDデビュー2周年を祝福するはずが「絶対的センターの不在、そして21人から2人欠けた19人での初単独ライブ強行」という試練の場となってしまう。かつて筆者が観覧した夏の全国ツアー名古屋公演(2017年8月16日)では当日に平手休演が発表され、ライブは平手のパートを空けたまま実施されるという異例の内容となったが、果たして今回の3公演ではどんなステージを繰り広げるのか。筆者のみならず、多くのファンがその内容に注目したはずだ。

 もっとも気になっていたのは、平手の代わりに誰がセンターポジションに立つのかというころだろう。最新シングル「ガラスを割れ!」のテレビパフォーマンスでは、平手の両サイドに立つ今泉佑唯と小林由依がダブルセンターという形でセンターポジションを務めたが、他の曲に関してはどうなるのか。「ガラスを割れ!」同様、今泉と小林が交互にセンターを担当するのか、あるいはけやき坂46兼任時にセンターに立つことが多かった長濱ねるが務めるのか……そんな思いを胸に、まずは初日6日公演に臨んだ。

 まず会場に着いて驚いたのが、その簡素なステージだ。廃墟、廃工場を思わせるセットは、どこか彼女たちの初単独ライブ(2016年12月、有明コロシアムで開催)を思わせるものでもあり、最新曲「ガラスを割れ!」のMVを彷彿とさせるものでもある。そんなセットの至るところにスクリーンが設置されているところは、昨年夏の全国ツアーにも似ている。

 定刻を過ぎ、オープニングSE「Overture」が爆音で流れ出すと、場内はペンライトで欅坂46のイメージカラーである緑1色に染め上げられる。そして「Overture」が終わると、壮大なSEに乗せてメンバーが1人、また1人とステージに登場する。最後に今泉と小林が登場し、ステージでフォーメーションを組むメンバーと合流すると、勢いよく蹴りをかます。そこからオープニングナンバー「ガラスを割れ!」に突入するのだが……メンバー全員が着用していたリバーシブルのロングサイズMA-1を、通常はセンターの平手が赤側、他メンバーが黒側にして着るところを、今回のライブでは全員が赤側で着用。今思えばこれは、メンバーの誰もがセンターに立つ可能性があること、また全員でセンターの不在をフォローするという意思表示だったのかもしれない。

 「ガラスを割れ!」はテレビパフォーマンスで見慣れていた編成ということもあり、若干の安心感を持って観ることができると思っていたが、曲が人を育てるのか、人とともに曲が育つのか、この曲で見せる今泉と小林の表情はどこか狂気じみたものすら感じられ、ゾクッとする瞬間が何度もあった。それは他のメンバーも同様で、凄みの効いた表情とパフォーマンスにはただ圧倒されるばかりだ。

 続く「避雷針」では渡邉理佐、「君をもう探さない」では菅井友香と曲ごとにセンターが変わっていき、客席からはどよめきと大歓声が響きわたる。ここで、今回のライブは曲ごとにセンターに立つメンバーを入れ替える、まさしく総力戦と呼ぶにふさわしい構成で挑むことが理解できた。昨年夏の名古屋公演では時間の関係などもあり実現できなかった形が、ついにここで実現されることになった。しかし、あのときと違うのはメンバーの覚悟。まだ昨年の時点では「平手抜きでもやり遂げる」という意志がそれぞれに足りていなかったのではないかと、ツアー終了後にメンバーにインタビューするたびに感じていたが、ついにここに来て腹を割ったのだろうか、とにかく1曲1曲から伝わってくる真剣さや思いが今までとは違ったのだ。しかも平手センターの印象が強い楽曲群を、代理を務めたメンバーたちは従来のイメージを壊すことなく、同時に自身の個性もしっかり打ち出している。もしかしたら潜在的に彼女たちの中に秘められていた実力・才能が、今回の逆境によって引き出されたのかもしれない。

 また、序盤4曲では曲間をスクリーンに表示される映像や次曲へとつながるキーワード的なポエムによって、ひとつの物語が進行しているかのような演出を見せる。これは昨年夏のツアーを踏襲したものでもあり、こういった世界観作りこそ欅坂46の真骨頂であることにも再認識させられた。

 4曲終えると、MCでは普段の柔らかいな笑顔のメンバーに戻る。この落差も欅坂46のライブにおける魅力のひとつかもしれない。特に今回はけやき坂46を欠いての単独公演だ。緩急をつけるという意味でも、公演中数少ないMCの場面は、観る者が一呼吸置く上でも重要なポイントと言える。

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