Frankie Cosmos、U.S.Girls、Goat Girl……海外インディーの注目女性アーティスト5選

U.S.Girls『In a Poem Unlimited』

 今回は海外のインディーシーンで注目を集める女性アーティストの新作を紹介。まずは、シカゴ出身のメーガン・レミーのソロユニット、U.S.Girlsの『In a Poem Unlimited』。前作、『Half Free』で<4AD>と契約を交わして、これまでのローファイなサウンドから一皮剥けて、ポップに作り込まれたサウンドへと進化。本作でもその路線を受け継いで、前作以上にバラエティ豊かな仕上がりだ。ガールズポップ、R&B、ディスコ、エレクトロなど、色鮮やかなパレットを広げるように多彩な音楽性を展開。知性と毒気を感じさせる歌は、ポストSt. Vincentといえるかも。

U.S. Girls - Rosebud (Official Video)
Frankie Cosmos『Vessel』

 Frankie CosmosはNY出身のグレーター・キニーが率いるバンド。U.S.Girlsのように宅録から出発して、今ではバンド編成へと進化したが、新作『Vessel』でもパーソナルな雰囲気は失っていない。緩急に富んだバンドサウンドは小動物みたいに元気よく飛び跳ねて、人懐っこいメロディや呟くようなボーカルからは、グレーターの体温が伝わってくるようだ。鼻歌のように軽やかだけど、曲の展開は複雑でアイデア豊富。友達とおしゃべりを楽しんでいるような自由奔放な語り口のなかに、しっかりとロックの躍動感が息づいている。

Frankie Cosmos - Being Alive [OFFICIAL VIDEO]
Goat Girl『Goat Girl』

 Goat Girlはサウス・ロンドン出身の女性4人組バンド。デビューアルバムとなる『Goat Girl』は、Franz FerdinandやThe Killsを手掛けたダン・キャリーをプロデューサーに迎えて、一発録りでレコーディングされた。翳りを帯びたメロディ、生々しいバンドサウンドが生み出すローファイで混沌とした音作りには、パンク/ニューウェーブの実験精神が息づいている。ところどころに間奏曲を入れて、アルバムにトータルな世界観を生み出したりと、アーティスティックなセンスにも注目したい。

Goat Girl - The Man

 オーストラリアのメルボルンを拠点に活動するJaalaは、シンガーソングライター、コジマ・ジャーラを中心にしたバンド。Hiatus Kaiyoteのポール・ベンダーがプロデュースしたデビューアルバム『Hard Hold』で注目を浴びた彼らの2作目『Junior Spirit』は、変拍子や複雑怪奇な展開とヘヴィなバンドサウンドが迷宮的世界を生み出すなか、ちょっと舌足らずの歌声が自由奔放に飛び跳ねる。プログレッシブでパンキッシュでガーリーで、Deerhoofを彷彿させるアヴァンポップな快作だ。

Jaala | Junior Spirit | Baked Goods Live Sessions
エズラ・ファーマン『Transangelic Exodus』

 そして、最後は特別枠でシカゴ出身のエズラ・ファーマン『Transangelic Exodus』を。前作『Perpetual Motion People』のジャケットに女装して登場したエズラ。自分がトランスジェンダーであることをカムアウトしたエズラは、今回のアルバムで真実とフィクションを織り交ぜながら、セクシュアリティや愛をテーマに歌っている。ドゥーワップやR&B、ロックンロールなどオールディーズサウンドを独自に消化しつつ、ビートが強調されたなヘヴィなサウンドは、最近のR&B/ヒップホップからの影響も感じさせて前作以上に攻撃的だ。そんななか、囁いている時でさえエモーショナルなボーカルが胸を打つ。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の映画『パーティで女の子に話しかけるには』のサントラに参加していたが、いつかエズラにはミュージカルを作ってほしい。もちろん、“ヒロイン”はエズラ本人で。

Ezra Furman - Love You So Bad

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。雑誌やライナーノート、パンフレットなどで音楽や映画について執筆中。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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