武藤昭平 with ウエノコウジが語る、音楽に対する探究心「曲に向かう姿勢が10年前と全然違ってる」

 勝手にしやがれのリーダーであり、ボーカル・ドラム担当である武藤昭平とthe HIATUSやRadio Carolineなどのバンドでベーシストとして活動するウエノコウジによるユニット、武藤昭平 with ウエノコウジが2月28日にアルバム『JUST ANOTHER DAY』をリリースした。今作では藤井一彦(THE GROOVERS/Gt)、堀江博久(Key)とアルバム全体を制作。これまでのスパニッシュやワールドミュージックという音楽性だけではなく、カントリー、スワンプを意識した作品となった。

 今回のインタビューでは、武藤昭平とウエノコウジの音楽の志向やカントリー、スワンプの奥深さ、また3月に『golden jubilee〜ウエノコウジ50生誕祭』を開催するなどともに今年50歳を迎える両者に活動のスタンスについて話を聞いた。(編集部)

好きだからいいじゃん、という感じが出ればいい(ウエノコウジ)

ーー今作は全編バンドレコーディングという作品です。今まで楽曲単位でのバンドレコーディグはありましたが、アルバム全部というのは初めてですね。

武藤昭平(以下、武藤):そうすね。去年の今頃にウエノ君と、次のレコーディングについてミーティングしたんです。僕はちょうど勝手(勝手にしやがれ)の新譜を出さなきゃいけない時期で(『ア・デイ・カムズ』2017年4月発売)、まだなんも考えてなかったんですよ。でもウエノ君の方はすごいアイデアをいっぱい持ってて。彼からカントリーとかスワンプをやりたいという希望が出たんです。“オレそこらへん通ってないのであまり知らないから、お勧めのアルバムとか聴いてみてそこから考えよう”って。

ウエノコウジ(以下、ウエノ):たまたまそこらへんを聴いてて、ちょっと関心が高まってた時期だったんだよね。酔っ払ってグラム・パーソンズとか聴いてさ。

武藤:一昨年レオン・ラッセルが亡くなったし。

ウエノコウジ

ウエノ:そうそう。なのでその辺を引っ張り出して聴いたりしたのがきっかけかな。白人がブルースをやる感じ、そこが改めていいなと思って、そこから広げてアメリカのカントリーやスワンプ方面を聴き始めてね。THE BYRDSの『ロデオの恋人(Sweetheart Of The Rodeo)』(1968年発売。グラム・パーソンズが参加した唯一のTHE BYRDS作品)が鍵になってるかな。もともと黒人のやるブルースは好きで、それに憧れた白人のロックンロールバンドも好きだったんだけど、はっきりしたカントリーやスワンプはそんなに聴いてなかったの。でもレオン・ラッセルが亡くなったあたりから、改めて聴いて、これいいじゃん、って思ったのかな。

ーーそれは年齢を重ねてきてわかるようになったってことですか。

ウエノ:そうね。(若い頃は)ぐっとくるポイントがなかったのかな。それだったら黒人のやるブルースを聴くよって思ってたのかも。

ーー武藤さんはウエノさんのそんな提案を聞いて、どう思ったんですか。

武藤:昔、勝手にしやがれをやる前に、オールディーズからハマってアメリカの音楽を好きになった時期はあったんです。今回ウエノ君からアイデアを受けて、具体的にカントリーだスワンプだっていうよりも、その頃のアメリカの古き良き音楽とか文化に影響を受けてたことを思い出したんですね。そういえば昔ジョニー・キャッシュとか聴いてたなと思って、そこらへんを引っ張り出してきて聴いて、そこからレオン・ラッセルやグラム・パーソンズあたりまで、改めて勉強し直して。

ーー武藤さんにとっては「再発見」だった。

武藤:そうですね。好きだったけど流してしまったものもいっぱいある。でも改めて聴くとすごくいいと感じて。

ーーこれまで武藤昭平 with ウエノコウジでやってきたこと、築き上げてきたものとの折り合いは考えました?

ウエノ:(笑)全然考えてない。関係ないよね?

武藤:ずいぶん前から、そういうことを意識するのはやめたんです。どうせ自分が作れば自分節が出てくるんで、これっぽくしようあれっぽくしよう、自分らしくやろうとか無理に考えずに、自然にできたものをそのまんまやるのでいいかなと。今回はいつもとは違う視野とアプローチでやってみたけど、歌詞の内容にしてもアメリカを意識したコードワークにしても、結局オレっていうフィルターを通せば、そしてウエノ君と試行錯誤すれば、今までの(武藤昭平 with ウエノコウジの)スパニッシュだったりワールドミュージックぽいものと違う視野でやっても、どうせウチらしいものにはなるんじゃないかなって。その自信、安心感みたいなものは昔からあるので。勝手にしやがれでもそうですよ。いろんなものに影響受けても、結局は勝手にしやがれになっちゃうでしょ、という。

ウエノ:曲の幹になるところは2人で作ってるからね。2人バージョンで既にライブでやってる曲もあるし。

ーーなるほど。堀江博久さんは前作『ストレンジャーズ』にも参加されてますが、藤井一彦さん(THE GROOVERS)は初めてですね。

武藤:ウエノ君が、カントリーで行くなら絶対一彦さんがいいって。ウエノ君は一彦さんと同郷で(ともに広島県出身)、付き合いも古いし。

ウエノ:同級生なんだわ。

武藤:その繋がりでオレもちょこちょこ会ったりしてたし。一彦さん1人の弾き語りと武藤昭平 with ウエノコウジで対バンやったこともあるし。去年一彦さんの生誕祭(藤井一彦生誕半世紀大感謝祭/2017年6月18日、東京 下北沢GARDEN)に2人も呼ばれて。一彦さん、ウエノ君、オレっていうトリオでライブやったりしたので、一彦さんの持ち味は知ってたし。

ウエノ:一彦なら間違いないですよ。今作で曲が揃っていくにつれ、これは一彦しかいないと思ったし。こういうのをやらせるとすごく信用してるし。実際、オレらが思ってた以上のことをやってくれたからね。嬉しかったよ。

ーーレコーディングはどういう形で行われたんですか?

ウエノ:(突然笑い出す)これがもう、大変なのよ! 2人(武藤とウエノ)の中では完成図というか、こうなるといいなっていうのは頭にあるんだけど、やってみなきゃわからないじゃん? 基本的にお任せしますって言ってあるので。リズムから録って重ねていくんだけど。武藤、オレでリズムを録って、それから一彦と堀江に重ねていってもらう。

武藤:一番最初に、ウエノ君ベースでオレがギター、オレはドラムも叩いて仮歌を入れたデモは作ったんです。そのデータを使ってスタジオを変えてドラムやベースを差し替えて、という作業でした。そのうえで、一彦さんがギターを入れる。お任せだったのでどうなるか最後までわからなかった。

ウエノ:こういうやり方だと何度もやり直せないからさ。

ーー事前にリハとかやったんですか。

ウエノ:ないないない。デモを送って、あとはその場で好きにやってって。

ーー出たとこ勝負。

ウエノ:そうそう。だからこの2人(藤井と堀江)じゃなきゃダメなのよ。信用してるし。堀江はオレらの界隈の中では一番音楽好きな人なので、説明しなくても全然大丈夫だし。

ーー堀江さんは守備範囲が広いですよね。

ウエノ:そう。ここはこうだからこう弾いてほしいっていちいち言わなくてもいいんだよね。この2人だと。そういう意味でこの2人しかいなかった。

ーーデモテープを送って、あとは感じたままにやってくれと。

ウエノ:たとえば「この曲はマディ・ウォーターズに憧れてる感じでお願いします」とか、そういうことは言った。

ーーそっくりそのままやるんじゃなくて。

ウエノ:うんうん。キーワードはね、グラム・パーソンズもそうだけど、「本物じゃない」だよ。カントリーやるにしたってさ、テンガロン・ハットかぶってGパンに線つけてど派手な上着着てとかさ(伝統的なカントリーミュージシャンのファッション)、そういう感じじゃなくて。それに憧れてるロックミュージシャンがやってる感じがいい。あくまでも自分たちの解釈で、好きだからいいじゃん、という感じが出ればいいと思うんだよね。

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