板野友美が語る、選択の中にある“自分らしさ” 「作られた私ではなく、自分を残したい」

自分の選択が自分のストーリーを生む

ーー「Just as I am」はミディアムバラードですけど、実際に歌詞を書いた時は、曲の雰囲気もすで決めていたんですか?

板野:はい。このコンセプトがいちばん伝わる楽曲だと考えると、ダンスナンバーではないですよね(笑)。それに写真集とMVの撮影場所がロサンゼルスと決まっていたので、ロサンゼルスの大地や開放的な風景のイメージを伝えて作っていただいたんですけど、もう本当にイメージ通りでビックリしました。聴いた瞬間に、ロサンゼルスの風景が浮かんだほどです。

ーーアコギの音がロスの乾いた大地にも似合うし、そこに板野さんのウェット感のある歌声が染みこんでいく感じでした。

板野:曲の始めのところとか、すごくぴったりですよね。その始まりのあたりは切ないメロディで、それがサビではダイナミックになって、MVの映像でも海や山の自然を中心にしたダイナミックなものになっていきます。ここまで曲と映像が一体になった楽曲は、なかなかないんじゃないかなって思います。だからCDで曲と歌詞だけで楽しんでいただくのもいいのですが、MVも観てもらえると、そこに込めた気持ちや雰囲気がより伝わると思いますね。もちろんCDとMVと写真集それぞれで楽しんでもらえればいいんですけど、私としてはその3つで完成した作品という感覚です。

ーー曲の前半はまだ自分を探している歌詞で、歌い方もどこか切ない。でも後半から最後にかけては、自分の道を見つけたことで、歌い方にも強さや自信が溢れていくような雰囲気。

板野:今回は、歌い方で何かを意識するようなことはなかったんですけど、自分で作詞をしたこともあって、歌詞の気持ちにすごく入り込んで歌うことができました。歌詞の感情のままに歌えたなと思います。曲の流れも歌詞のストーリーと合っていたし、レコーディングは日本で行いましたけど、まさしくMVの映像のような景色を想像して、まるでロサンゼルスにいるような気持ちでした。

ーー歌詞には<失うことではじめて気づけた事があるよ>というフレーズもあって、ここはどうしても入れたかったそうですけど。

板野:ここからの4行は、自分のこれまでを振り返った時に感じたことを書いています。10代や20代前半には感じることができなかった、今だから書けた一節だと思います。何かを失ったり傷ついたりすることって、誰でも日常生活で経験することですよね。その経験を見捨てるというか、なかったことにするのではなく、受け入れることで糧にできたということが言いたかったんです。10代のころは、「もう嫌だ」って投げ出していたようなことも、今はちゃんと向き合えるようになったことで成長できていると思うので。何かの困難に直面した時に、素通りするのではなく、向き合い方を考えたり、それができないなら自分を変えることも必要だと思ったし。ある意味で考え方が柔軟になったのかな? と思います。

ーー歌詞は、あくまでも旅の途中であって、最終的に何かひとつの結論を出しているわけではない。

板野:そうですね。2番のサビでは、前向きに歩いていけばもっといい未来が待っていると、これからのことを歌っています。つまりまだ道の途中で、先に未来があるということ。今の自分が小さい時に想像した自分ではなかったとしても間違いじゃないし、今まで通ってきた道やこれから進む道が、自分にとっての最良のストーリーなんだということを伝えたいですね。
 

ーー「Just as I am」は、“ありのままの自分らしさ”という意味。自分のことは見えた?

板野:撮影は、一人旅をしているような雰囲気でおこなったので、知らない世界や環境で自分はどんな反応をするのか、自分でも楽しみにしていました。ロサンゼルスには一週間滞在したんですけど、前までは海が好きだったけど山を見た時に「やっぱり山も好きかも」と思ったり、今まで自分が好きだろうと思っていたことが、実はそうでもなかったり、苦手だと思っていたことが好きだったり。たくさんの新しい自分を発見できました。昔行ったロサンゼルスと今回行ったロサンゼルスでは、同じ場所でも気持ちがまったく違った。人間って成長すると言うか、自分でも知らないうちにどんどん変わっていっているんだなって実感できました。きっとこれからも、日々見方や感じ方がどんどん変わるんだと思う。

ーー前は海が好きで、今回は山が好きで。自然が好き?

板野:でも街も好きです(笑)。もともと高層ビルとか都会が好きで、以前は自然に癒やされる感覚はなかったんですけど、今回行ったらすごくパワーをもらったと感じた。太陽からパワーをもらうとか、10代のうちにはぜんぜん感じてなかったし。そういうことも感じられるようになって、私もやっと大人になったのかなって。

ーー年代によって食べ物の好みも変わりますからね。

板野:それに近いかもしれないですね。大人になるとお肉よりも魚が好きになったり、独特のくさみを持ったものが好きになったりしますしね。そういう味覚以外にも、いろいろな感覚、感じ方が変わるものなんだなって思います。

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