森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.85
赤い公園、SCANDAL、Mrs. GREEN APPLE、NCIS、凛として時雨…それぞれの“今”を感じる新作
ゼロ年代前半のシーンを席捲したバンドで活躍してきた生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)、そして、当時は無名の存在だった村松拓(Vo/Gt)によって2008年に結成されたNothing’s Carved In Stone。10周年イヤーにリリースされる9枚目のオリジナルアルバム『Mirror Ocean』は、海外のエモコア、モダンヘヴィロック、ポストロックとごく自然にリンクした楽曲、個性とテクニックがせめぎ合うアンサンブル、生形のエモーショナルかつダイナミックが有機的に結びついた充実作となった。特筆すべきは表題曲「Mirror Ocean」。こんなにもスケールの大きい音をナチュラルに響かせることができるバンドは、本当に稀だと思う。2018年10月7日には初の日本武道館公演も決定。媚びず、ブレず、自分たちの感性だけを信じて進化を続けるNCISはここから、さらなる高みに向かっていくはずだ。
ハードコア、インダストリアル、ポストロック、ノイズなどのエッセンスを振りまきながら3つの音が激しくぶつかり合い、美しくも繊細なサウンドエスケープを描き出す。1曲目の「Ultra Overcorrection」を聴いた瞬間に“凛として時雨が帰ってきた!”という歓喜が湧き上がってきた。実に5年ぶりとなるオリジナルアルバム『#5』。ここ数年はメンバー個々のソロワーク、別ユニットや別バンドでの活動が目立っていた3人だが、TK(Vo/Gt)、345(Vo/Ba)、ピエール中野(Dr)のアンサンブルはやはり別格。破壊的な衝動をリアルに伝えながら、アートフォームとしての完成度の高さ、細部にまでこだわり抜いた構築美を堪能できる、“これぞ、凛として時雨”と言いたくなる作品である。結成15周年を経て、今年は濃密な活動が期待できそうだ。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。