『LUNA SEA The Holy Night 2017』レポート
LUNA SEAは攻める姿勢を崩さない 『The Holy Night』に見た、次に向かおうとする意思表示
LUNA SEAが12月23、24日の2日間、さいたまスーパーアリーナで『LUNA SEA The Holy Night 2017』を開催した。
その数日前の20日にリリースされた、4年ぶりのオリジナルアルバム『LUV』はファンの中で評価が分かれていた。どこか退廃的で刺々しさを持ったバンドのパブリックイメージとは異なり、端的にいえば、カラフルで明るくて開放的なアルバムである。飽くなき音楽探求で進化し続けてきた彼らの“現在”を表していると言われれば、そうなのかもしれない。ただ、個人的な第一印象としては、肩透かしを喰らった気分にもなった。まだ聴き込めていないところもあるし、今更LUNA SEAに不安を感じることなどはないのだが、なんとも言えない気持ちでその日を迎えたのも正直なところである。
「巷ではイブイブと呼ぶんでしょうかね? “LUNATIC CHRISTMAS”を思いきり今宵、楽しみましょう!」(RYUICHI)
1995年東京ドームでの初ライブ『LUNATIC TOKYO』、1996年横浜スタジアムの『真冬の野外』にはじまり、彼らにとって特別な日である12月23日は、今年から“LUNATIC CHRISTMAS”になった。
「RYUがいい言葉を作ったね、“LUNATIC CHRISTMAS”。これは恒例にして、毎年12月23日はみんなで“LUNATIC CHRISTMAS”を祝うってことで」(SUGIZO)
そんな『LUNA SEA The Holy Night 2017』初日を観た。
ライブは「STORM」で幕開けた。流麗なイントロからいつもより大きくタメを入れた真矢(Dr)のカウントで、堰を切ったように音の洪水が一気に襲いかかる。それを受け、RYUICHI(Vo)がニヒルに歌い出す。そして、「Dejavu」「TRUE BLUE」とキラーチューンを畳み掛けていく。
LUNA SEAのグルーヴは凄まじい。綿密に練られた複雑なオーケストレーションを5人がせめぎあいながら巧みに操っていく。その様に情景がある、といえば良いのだろうか。目に見えているステージの様子とは違う、なにか別のものを同時に見ている感覚に襲われる。予定調和ではないドラマティックな壮大な物語を見ている気分になってくるのだ。ステージ後方には無数のキューブ型のオブジェが幾何学的に配置され、そこにステンドグラスや宇宙、恒星などを模したプロジェクションマッピングが映し出されていたことも、そんな不思議な感覚を増長させるところがあったのだが、それだけではない。5人から発せられるものは音だけではないのである。まばゆい光を放つ分厚いエネルギーを容赦なく溢れさせているのが、はっきりと感じられるのだ。
ツーバスならぬ、トリプルバスの派手やかなネオンイエローのセットで重厚なリズムを叩きだす真矢(Dr)、地を這うような低音を轟かすJ(Ba)。このシーンにおけるバンドでは珍しい後ノリのリズム隊2人に、前ノリで切り込んでくる2本のギターが、LUNA SEA独自の音を創り上げていく。
INORAN(Gt)のギターは鮮麗で繊細だ。そして、空間を司るようにSUGIZO(Gt / Violin)のギターが咆哮する。オーディエンス含めたライブの着火点を探っていくのも、逆にヒートアップしすぎたグルーヴを引き戻すのも、天鵞絨のように滑らかで咽び泣くようなロングトーンだ。フレーズのみならず、音の根幹すらをも操っていく唯一無二のギタープレイである。
そんなSUGIZOのサウンドメイクが、以前とは少し変わっている印象を受けた。とくにこの日使用頻度の高かったギター、“NO NUKES”の文字が書かれた、Navigator N-ST SGZ Custom -Z-だ。ブラック、シルバー、といったゴシックなイメージの強い彼だけにナチュラルウッドのギターはその手にしたビジュアルも新鮮だが、そこからはじき出される抜群の音抜けを持つカラッとした張りのあるトーンも、楽曲とバンドサウンドにこれまでと違った息吹をもたらしていた。「STORM」や「ROSIER」をはじめ、アップテンポの楽曲を中心に使用されていたが、噛みつくようなエッジ感と、わずかな揺れも逃さない高解像度を持ち合わせたトーンは絶品で、「JESUS」のイントロはこれまで聴いてきたものとは違うリフに聴こえたくらいだ。
サウンドといえば、この日は楽器機材周りやマイクを水素燃料電池自動車からの電気を使用する試みが行われていた。今年5月の日本武道館公演ではSUGIZOのみの使用だったが、今回はメンバー全員分、もちろん世界初のことである。「環境に優しく、安定した供給力」として注目されている燃料電池であるが、野外でもドームでもアリーナでも、サウンドと音響には徹底的にこだわり抜いている彼らが選んだのだから、音質面を考えても最良のシステムなのだろう。「(音がいいので)間違えたらすぐわかる」とSUGIZOが話していたが、先述のサウンドメイクの違いに気づいたのも、もしかしたらこのシステムのおかげなのかもしれない。