『祭nine.秋祭り2017 〜どデカイ太鼓打ち鳴らせ!in 中野サンプラザホール〜』レポート

祭nine.が中野サンプラザ公演で見せた、“芸達者なボイメンのDNA”と各メンバーの魅力

 と、ここでスクリーンには廃墟のような風景が映し出される。<生きることは戦い/男ならその手でつかめ/生きた証/栄光の旗>というテロップに続けて、アクロバットとアクションを組み合わせた映画『ファイト・クラブ』風のコーナーがスタート。夏に行われたライブハウスでのイベント『祭nine.夏フェス2017「嗚呼、初祭り」~デンツクマスター認定試験東京会場はこちら!~』でも披露されていたが、メンバー同士がしっかり息を合わせてのスリリングなパフォーマンスは壮観だった。

 この流れからロックテイストのナンバー「ALIVE!」(BOYS AND MEN研究生)へとステージは展開していく。これまで披露された楽曲の中でもっとも情熱的なこの曲では、清水天規が指先にまで色気が漂うダンスを、寺坂頼我もフラッグを持ったままでアクロバットを繰り出すなど、大人な祭nine.が観られるのが特徴的といえる。

 そしてこのライブの中でもひときわ黄色い歓声が聞かれたのが、「My First…」(BOYS AND MEN研究生)で7人が白いスーツ姿で登場した瞬間だった。寺坂頼我が王子様風のロングジャケット、清水天規が黒のレザータイを締めるなど、一人一人のキャラに合わせたコーディネートだったのもなかなかニクい演出だったように思う。そして客席から「まさか???」とざわめきが起こったのは、続く「Candor」。ボイメンがライブのエンディングなどで披露してきたこのバラードを、学ランもダンスもアクロバットも封印して歌った7人は、やや感極まったような表情だった。歌に関して言えば全員のスキルがめちゃくちゃに高いというわけではない祭nine.だが、この曲のユニゾン部分で聴かせるピュアな響きにはぐっと胸を掴まれた。

 本編ラストはやはりボイメンの名曲「Chance for Change」。デビューからこれまでの時間を、リリースイベントでファンと触れ合って過ごしてきた彼らだけに、この曲ではメンバーが客席に降り、祭りっ子たちとハイタッチしながら感謝の気持ちを伝えていく。本編最後のMCでは、「僕らが祭りっ子のみなさんを“てっぺん”につれていきます! 必ず“てっぺん”の景色を見せますので、これからの僕らを楽しみにしていてください」(寺坂頼我)と語り、客席に向かって深々と頭を下げた7人に大きな拍手が続いていた。

 アンコールでは1人で登場した寺坂頼我の前に“寺坂頼我LOVE LOVE親衛隊”なる6人組が現れて「今日のあなたのパフォーマンスでは、アンコールのステージには立たせられないわ!」と大ブーイング……? というコントがスタート。なぜかサザエさん風の主婦(野々田奏)に激しく怒られ、56歳のおっさん(清水天規)が披露するキレキレのブレイキンと同じ振りを再現させられたりと立て続けに災難に遭う寺坂頼我。ここでのおませな幼稚園児(横山統威)やヤンキー女子高生(浦上拓也)、カタコトの日本語をしゃべるムエタイボクサー(髙崎寿希也)に扮したメンバーのなりきり演技に客席が大ウケ。「アンコール一発目がコント。これがフォーチュンエンターテイメントです!」(浦上拓也)とMCでメンバーも苦笑いしていたが、確かにバラードからのコントというこの振り幅には、芸達者なボイメンのDNAを感じさせるものがある。

 デビューシングルの人気曲「BE☆THE WIND」、そして感謝の思いを込めたBOYS AND MEN 研究生ナンバー「39S」でサインボールを投げたりと、和やかムードで終了したこのライブ。「お客さんを含めての祭nine.だと思っているので、みなさんと2人3脚で伝説を作れたら」と寺坂頼我が語っていたが、兄貴分のボイメンとは似て非なるきらめきを感じさせる祭nine.なら、この日のステージもいつか伝説にできるのかもしれない。

■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。

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