『bonobos、現体制初の日比谷野音ワンマンを映像化プロジェクト!』

bonobos新体制は野音を終えて“一巡”へ? メンバーに訊く「今の5人だから生み出せる音楽」

 小池龍平(Gt)、田中佑司(Key)梅本浩亘(Dr)を迎えた新体制で2016年9月にアルバム『23区』をリリースするという、大きな変化を迎えたbonobos。彼らが東京・日比谷野外音楽堂で8月12日に行なった現体制初の野音公演は、見事成功に終わった。そんなライブの模様を映像化するプロジェクトが、クラウドファンディング・プラットフォーム『CAMPFIRE』にて展開中。記事公開時点で終了日があと5日に迫っている(参考:bonobos、現体制初の日比谷野音ワンマンを映像化プロジェクト!)。

 今回リアルサウンドでは、『Jazz The New Chapter』シリーズの監修者も務める柳樂光隆氏をインタビュアーに迎え、bonobosの蔡忠浩(Vo/Gt)、森本夏子(Ba)、小池龍平(Gt)を取材。プロジェクト立ち上げの経緯や野音公演の手応え、そしてbonobosが作る音楽の核となる部分や次作での挑戦などについて、じっくりと話を訊いた。(編集部)

「野音も新人バンドみたいな緊張感があった」(森本)

――そもそもこのプロジェクトを立ち上げたきっかけから聞かせてください。

蔡忠浩(以下、蔡):野音は毎年とまではいかなくても、2,3年に一回くらいはやりたい公演だけど、ここ数年、野音の倍率が跳ね上がって、まず取れないんですよ。でも、今年はたまたま巡り合わせがあって、「できそうだ」って話が年始に来て。バンドとして経験しておきたい事柄が俺の中でいくつかあるんですけど、その中に野音も入っていて、今の5人でやりたいなって思っていたんですよ。でも、計画としては来年くらいを見据えて相談もしていたんだけど、それが降って湧いたような感じで使えるようになったので、出来るタイミングでやっておこうと。

蔡忠浩

――それを映像化しようと思ったのはどうしてですか?

森本夏子(以下、森本):今のマネージャーが天才バンドも担当していて、彼らがクラウドファンディングをやって、うまくいったのが大きいですね。でも、「野音をクラウドファンディングでDVDにしましょうよ」みたいなことを言われた3日後くらいにクラムボンが野音のクラウドファンディングを発表して、すごい成功してて。「あー、すごいなー……」と思って、そこでも悩んだのを覚えてます。でも、マネージャーが「いやいや、大丈夫だからやろうよ」って背中を押してくれて。

森本夏子

蔡:今までは制作費を自分たちで用意して音源を作ってリリースして、売って、戻ってきた対価で食べていく、みたいな物の作り方だけをしてきたので、こうやって事前にお金を集めて、何かを作る過程はやったことがなかったのもあって、悩んでいたんです。でも、新しいメンバーのことを考えると、記録としてちゃんと残して作品にするタイミングだろうなと思って、今回はやりながらどういうものなのかを染み込ませていく機会にしようと思いました。もちろん不安もありましたけどね。全然集まらなくて、目標に到達しなかったらどうしようって、単なるビビりっていうのも。10何年もやってるのに、届かなかったらなんてみっともないんだろうとか。いろんな思いがをごちゃまぜになって、二の足を踏んでいたんですけど、腹くくってやろうかって。

――葛藤がありつつ一歩踏み出してみたんですね。

蔡:今は、やっぱ全部を大事にしたいんですよ。昔はメジャーのレーベルにいて、お金のことは何も考えなくて、作品だけ作ってた。その頃は死ぬほどわがまま言い倒してたけど、メンバーもやめたり、事務所とかレーベルを自分たちでやり始めたりするようになると、どんどん背負うものとか、動かさなきゃいけないものとか関わってくれる人とか、いろんなものが増えていくんです。だからこそ、続けるってすげー大変。バンドもだし、音楽を生業として続けていくこと自体がすごい大変だし、その中で10何年もやってきて、今の5人になってからは、ある種の奇跡的なバランスなように思う時が結構あって。それをなるべく俺は壊さないように、大事にしたい。昔は自分の作品のためだったら、そんなものは全部壊してもいいくらいに思ってわがままやってたんですけど、今はbonobosって器と、そこに集まってくれたみんながbonobosのためにやってくれていることをなるべく壊さないように、大事にしたいと思っています。

――守るものができてきたということですね。

小池龍平(以下、小池):僕は蔡くんの歌と音楽性にそもそも興味があるんですけど、そこは決して保守的にはなってないと思うし、どんどん新しいものを取り入れて、今まで自分が知らない音楽にもチャレンジしていく姿勢はすごく尊敬できるんです。時々そこについていけなくなる時もあるけど、それは僕が時間をかけて咀嚼すれば、追いついていけるのかなと思っていて。蔡くんって、いい意味で他人を揺さぶる人間なんですよね。

小池龍平

――蔡さんとメンバーがいいバランスになっているのって、音楽についても同じだと思うんですよ。今の編成はすごくいい状態だから、ライブもいつも素晴らしい。だから、ライブ盤が出たらいいのにって僕は思ってましたけど。

蔡:ライブ盤はこれまで自主でも作ってたけど、さすがにDVDともなると難しくて。でも、クラウドファンディングだと、受注販売みたいな形ともいえるから作りやすいし買いやすいよね。特典もつくし、お互い優しいシステムではあると思います。

森本:6年前の野音もカメラを入れて撮ってたんですけど、そこから製品にするハードルが高くて、製品化されなかったんですよ。お蔵入り。

蔡:編集するのも大変だし、大阪からエンジニアに来てもらって録りはしたけど、そこから作り上げる体力と予算がなくて。

森本:だから、今回、クラウドファンディングがなかったら野音の映像化はできなかったよね。

蔡:それに、自分もリターンの歌詞集本を作るにあたって、これを機に今までの歌詞をまとめることができそうだし、今の5人でこれまでの活動が一巡するかなってこともある。そうすることで、次のアルバムは、真っ新なところからやれそうな気がするというか。なんだかんだ15年やってきたバンドなりに、その延長線上にある活動だけど、野音が終わって、DVDにもして、俺的にも詩集で一区切りつけて、全部気が済むというか。これからは完全に新しくできるような気がしますね、曲の作り方もそうだし。細胞が丸々生まれ変わったみたいな感じもありますからね。

森本:野音も新人バンドみたいな緊張感があったよね。

小池:緊張してた? 梅(梅本浩亘・Dr.)は緊張してたよね。佑司(田中佑司・Key.)もテンション上がり過ぎてたし。

森本:そうそう。だから初々しいんだよ。

蔡:そういうのもうれしかったですけどね。バンド自体は15年以上やっててベテランですけど、メンバーは新しく入った人もいて、野音を初めて経験するメンバーもいたから、中身は初々しい感じだった。新人バンドみたいなメンタルで挑んだのは良かったなって。

――野音に合わせて取り組んだ、特別なことはありますか?

蔡:今の素の状態の5人の演奏をみんなに見てもらって、その時のことを記録したい、という感じでしたね。あと、そんなに背伸びしなくても、基本的にバンドとしての演奏力が格段に上がっているので、野音だからって特別に何かすることはなかったですね、それは考えづらかった。

森本:でも、時間帯に合わせてセットリストは組みましたね。日没時間を調べたりして、それに合う曲を並べていって。

蔡:曲の分数を並べて、曲の歌詞の内容とか、曲から見える風景とかを想定しながら、この辺かなって。野音は妙な高揚感があって、お客さんもそうだった気がするよね。6年ぶりの野音っていうのもあるし、bonobosを最近聴き始めた人にとっては初めての野音だし、古くから知ってる人にとっては久しぶりだろうし、お客さんもめっちゃ楽しそうにしてたね。自由席にして、キッズチケットを出して、子供も連れてきやすいようにしましたね。昔、『レッツゴー3匹』って言って、ハイエースに機材を積み込んで、地方のお寺とか神社教会とかカフェとかを回るライブをやっていたんですけど、その時にわりと子供連れの方が多くて。子供と一緒に来れるだけでも、お客さんはうれしかったみたいですね。子供が走り回ってるライブもいいですよ。

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