LACCO TOWER、15年の軌跡を示した『黒白歌合戦』  松川「これからもついてきてください」

 結成15年を迎えたLACCO TOWERが、周年記念ワンマン『黒白歌合戦』を開催した。イベントの公式ホームページ曰く、歌詞の世界観やその内容を踏まえ、メンバー自身がバンドの楽曲を「白」と「黒」に分類することが多々あったというLACCO TOWER。この「黒白歌合戦」では、「白」と「黒」に演奏曲目を振り分けて披露、さらに当日の演奏曲目を事前公開するというかつてない試みが実行された。

 東京・LIQUIDROOM公演は一日で「白」と「黒」の両方を網羅する二部構成で、そしてバンドの地元である群馬・高崎club FREEZ公演は2日間に分けて開催された同イベントだが、以下のテキストでは、7月17日に行われたLIQUIDROOM公演の模様をレポートしていきたい。

 前半は白の部。松川ケイスケ(Vo)の提案により、バンド史上初めて浴衣姿でステージに臨んだ5人は、ライブで演奏するのは久々だという「傘」や、「こんなにたくさんの人に聴いてもらえなかった」頃の初期曲、さらに松川がライブ中よく口にする「幸せになれたかい?」という言葉の代名詞のような曲「幸福」などを披露した。曲調でいうとメジャーコードの明るいもの、速さでいうとミディアムテンポのものが多かった白の部。とはいえバンドの演奏が大人しいわけではなく、真一ジェット(Key)は時に椅子の上に立ちあがりながら熱量溢れるプレイを見せ、細川大介(Gt)渾身のフレーズが会場狭しと鳴りわたり、重田雅俊(Dr)と塩崎啓示(Ba)のリズム隊は、松川の歌を押し上げていく。そうしてバンドサウンドは瞬く間に増幅していき、1曲目「白」からいきなりクライマックスのようなボリューム感に仕上がっていた。

 そして、Northern 19、MERRYのガラ、NUBO、四星球、アルカラと、LACCO TOWERと同じく結成15周年であるバンドからの祝辞動画を経て突入した後半・黒の部では、マイナーコードを基調とした、ハードでカオスな曲が並ぶ。「ようこそ、暗黒・漆黒・黒の部へ!」と松川が挨拶したのを皮切りに、フロント3人のステージングも一気にアグレッシブなものに。先ほどまで天から差す光が如くバンドサウンドに彩りを与えていた細川のギターは大きく軋み、緊急事態を知らせるベルのように真一ジェットのフレーズが轟く。重田と塩崎によるビートも変則性を増し、歪な昂揚感を生み出していった。

 音像でいうと「白」と「黒」は正反対かもしれないが、例えば未来に視線を向けている「白」の曲には拭えない後悔を歌っている曲が案外多く、天へ腕を伸ばしたり両手を広げるようにしながら歌う松川のしぐさも、何かを掴もうとして懸命にもがく様子に見える。一方、悩みと葛藤の「黒」の曲は、必ず救いや赦しの要素を孕んでいるのがひとつの特徴。黒の部終盤で、松川は空を蹴り上げながら「くだらないもんは全部、今日はここに置いていけ!」とシャウトしていたが、つまるところそれは、また明日からを生きるための言葉であり、「幸せになれたかい?」という言葉と根っこは通じているわけだ。

 円を描くように繋がり合い、循環する「白」と「黒」。要するに、日本語詞にこだわり続けたこのバンドがずっと貫き通してきた「繊細なタッチで日々の感情を漏らさずに綴る」という点は、「白」だろうと「黒」だろうと、変わりはしなかったということ。黒の部の序盤で、オーディエンスの体調を気遣うようなMCをしたあと、松川が「人柄までは変わりません」と笑っていたのも強く印象に残っている。

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