作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第11回
『関ジャム』出演! 作詞家zoppが語る、ヒットする応援歌の共通点「平歌とサビは目線が違う」
「大衆歌の場合は平歌の部分に“あるある感”を出せるかが重要」
ーーキャッチーな言葉や曲の全体像がサビにあって、でも平歌でそこを補強するキャラクターがいる、というのはJ-POPの王道パターンと言っても良いかもしれませんね。
zopp:そうですね。超大衆曲だと思います。だから、応援歌はドキュメンタリーなんです。悩んでいる人を平歌で歌って、サビで応援してあげている。
ーー大衆歌は、街鳴りやTV番組、CMでサビだけを聴いて知ることも多いですもんね。
zopp:はい。歌詞は主観だけで終わるパターンと、主観と客観・俯瞰の両方を入れるパターンがあるんです。シンガーソングライターの方は大体皆さん自分の話なので、主観だけのパターンだと思います。今の時代、1曲を通して聴く機会は少なくなってきています。CMで流れるサビでは俯瞰で歌っていて、その歌詞に勇気づけられて1曲通して聴いてみたら平歌にエピソードがいくつかあるから、二度楽しめる。特にCMのタイアップができたころぐらいからはそういう作り方が多くなってきている気がしますね。CMで曲が流れる時間、サビ頭の15秒とかですから。
ーーなるほど。「『世界に一つだけの花』方式」の元祖ってどの曲なんでしょう?
zopp:「明日があるさ」ですかね。この曲は大衆歌の中でも特に、<いつもの駅でいつも逢う/セーラー服のお下げ髪/もうくる頃 もうくる頃/今日も待ちぼうけ>という平歌と<明日がある 明日がある 明日があるさ>というサビが全く違う目線な気がします。
ーー確かにこの曲は1番も2番も3番も、平歌のディテールがとても細かいです。平歌にある主観の部分が具体的からこそ、より共感できるんですね。
zopp:そうだと思います。大衆歌の場合は平歌の部分にいかに“あるある感”を出せるかが重要ですね。「明日があるさ」の平歌はとてもドキュメンタリーチックなんです。よく例に出すのが、『ザ・ノンフィクション』のようなドキュメンタリー番組。3人ぐらいのシングルマザーを同時進行で追いかけながら、最後にはシングルマザーって頑張ってて大変だよね、と落ち着く構成は、応援歌、大衆歌に似ているんです。実は作詞クラブにも、1番の歌詞を書くと2番を書けない人がたくさんいるんですよ。もう1番で言いたいことを書いたから2番に何を書いていいのか分からない、と。でも、ドキュメンタリー番組のように違う人物のことを書くとか、前半と後半で分ける、もしくは現代と過去に分けるという風に考えると、歌詞も作りやすいと思います。
(取材=中村拓海、村上夏菜/構成=村上夏菜)