TWICEは“ポップミュージックの未来”を示している 日本デビューへ寄せる期待

 「OOH-AHH하게」では、ヒップホップからチップチューン、そしてマジービートまで織り交ぜ、そこにSPICE GIRLS的エッセンスをぶちこんだような究極のごった煮サウンドが展開。ポップミュージックのおいしいところを濃縮したような楽曲は聴きどころ満載である。TWICEの人気を決定づけた「CHEER UP」では、さらにフューチャーベースとトラップの要素が追加されただけではなく、ハナ肇とクレージーキャッツもかくやというほどコミカルなギミックサウンドが飛び交う。もし大瀧詠一氏が存命なら自身のラジオ番組『ゴー・ゴー・ナイアガラ』で絶賛しただろう。続く「TT」ではそのうえ、メロディに80年代を席巻したニューロマンティック系の泣きメロがトッピングされている。最新のダンスミュージックからクラシックロックまで、これ以上にミクスチャーしたら楽曲自体が成り立たないほど、絶妙なバランスだ。このめまぐるしい「ストリーム感」こそが、TWICEサウンドの秘密であり、彼女達が時代のアンセムとして熱狂的に支持されている理由だろう。

 ある意味、禁じ手まみれの無手勝流なサウンドがポップスとしての普遍性をもってしまう奇跡。TWICEのサウンドアプローチに最も近しい手法を採ったアーティストを、これまでのポップス史から探すとしたら、それはThe Beatlesではないだろうか。プロデューサーのジョージ・マーティンから「無茶苦茶」と言われながらも、常に時代の最先端の音と戯れつづけた、アイドルの中のアイドル。TWICEの既発曲のフレッシュさに、The Beatlesの実験精神を感じてしまうのは、きっと筆者だけではないはずだ。

 TWICEは、The Beatlesが「She Loves You」のラストで六度の和音をぶち込んだように、大瀧詠一氏が最先端のリズムを追求した末に“音頭”に辿り着いてしまったように、「最新のダンスミュージックをどう解釈し、自らの音に取り込むのか?」という命題に対し、音圧だけではなく、明快かつ斬新な手法でも応えてみせた。

 かつてThe Beatlesは『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』という世界初のコンセプト・アルバムで、録音芸術の新たな可能性を提示した。TWICEの国境を越えたメンバー構成、あらゆるダンスミュージックを横断していく音楽性は、まさにストリーミング時代ならではの圧倒的な「自由」を体現するものとして、これからのポップミュージックのあり方を指し示している。

(文=ターボ向後)

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