1stアルバム『ココロノコエ』インタビュー
丸本莉子が再確認した、“等身大の思い”を歌い続ける理由「日常で感じ取ったことを歌にしたい」
丸本莉子の1stアルバム『ココロノコエ』が完成した。メジャーデビュー曲であり、6年前に広島から上京してきた時に夢を掴むきっかけとなった1stシングル「ココロ予報」をはじめ、言葉にできない真っ直ぐな感情を歌い上げた6thシングル「誰にもわからない」まで全シングル曲を収録した現時点でのベスト盤的な作品となっている。新たに収められた新曲5曲を含め、アルバム全体から見えてくるのはリスナーの日常に寄り添う彼女の等身大の思いだ。
今回のインタビューでは、アルバムタイトルのきっかけでもあり、リード曲としての位置にもある「ココロ予報」の制作エピソードからそれぞれの新曲について、アルバム制作を終えた今の丸本のモードを語ってもらった。「今は曲をたくさん作れそうなイメージがある」と話す彼女の次の作品が楽しみになった。(渡辺彰浩)
「『ココロ予報』はスタート地点」
ーーまずは、『ココロノコエ』というアルバムタイトルについて聞かせてください。
丸本莉子(以下、丸本):私の曲には“ココロ”を表した歌詞が多くあって、普段面と向かっては言えないことも歌だったら素直に声にして言える。それが歌にする意味なのかなと思い、今回『ココロノコエ』というタイトルにしました。デビューシングルが『ココロ予報』ということもあります。
ーー「ココロ予報」はデビュー曲であり、アルバムのリード曲のような位置付けにもあります。改めてこの曲の出来た背景を教えてもらえますか?
丸本:広島から上京してすぐの頃に、広島ホームテレビのドキュメンタリー番組『雨のち晴れ』の主題歌を作ってみないかというチャンスをもらったんです。だいたい1カ月に1曲のペースで作っていたところに、「3日で3曲作ってきて」と言われた上に、初めてテーマをもらって期限がある中で作曲するということにすごく苦労して。でも「雨のち晴れ」という楽曲のテーマが、その時の私の状況と重なったんです。東京に来たら夢が叶うと思っていたけどここには何もない、広島に帰りたいと思っていた時に、これを乗り越えたら私にとっての晴れがあるんだと思えたんです。
ーーそうして作った3曲をテレビ局の方に披露したと。
丸本:2曲は出来ていたんですけど、もう1曲のサビが当日まで浮かばなくて……。そこで即興で歌ったんですよ。そうしたら「いいね、このメロディーでいこう」と言ってもらえて。それが今の「ココロ予報」なんです。ピンチの時に生まれたメロディーです。
ーーサビの歌詞も即興で歌ったんですか?
丸本:歌詞は一応ありました。でも<にじんだ星>のような格好つけた歌詞を書いていたんですよ。歌い終わった後に「それでは響かない、伝わりにくい。格好つけずに今のありのままの自分を書きなさい」とアドバイスをいただいて、それで何回も考えて出た言葉が今のシンプルな歌詞だったんです。その時言われたことは今も一番大切にしていることで、「ココロ予報」はスタート地点ですね。それまではみんなを元気に、笑顔にしたいという思いで曲を作っていたことが多かったんですけど、「ココロ予報」は自分自身の今の状況をそのまま書いた曲なんです。苦しい思いをしている人から「『ココロ予報』を聴いて頑張ろうと思えた」というメッセージをもらえたりして、自分の気持ちを格好つけずに伝えた結果、同じ境遇の人たちにも響いたり、共感してもらえたのかなと思います。
ーー「ココロ予報」での制作の経験が今の丸本さんの原点でもあるんですね。即興というところで、昨年末に開催した『丸本ん家(ち)へようこそ~ぷれぜんとふぉーゆー2016~in 東京』でもバンドの楽器トラブルが起こった際に、丸本さんが即興で作った楽曲を披露する場面がありました。
丸本:ありましたね。あの時はギターも歌詞もアドリブで、それにバンドメンバーもセッションしてきてくれて、内心ビクビクでした。確かにピンチには強いかもしれないですね。いつも歌詞とか曲は期限ギリギリまで悩むんです。でもたくさん悩むことで最後にはいいアイデアがでてくるんです。
ーーライブではカバー曲を披露することも多いですが、先日の『満月の夜の丸本さん家Vol.1』で披露していた小田和正さんの「言葉にできない」がアルバムには収録されています。
丸本:「言葉にできない」はあのイベントで演奏したのが初めてで、それをディレクターさんが聴いた上で収録が決まりました。これまでは荒井由実さんや中島みゆきさん、イルカさんといった女性の曲をカバーしていましたが、男性の方の曲を私の声で歌ってみたいなという思いがあって新しく挑戦してみました。レコーディングではアコースティックギターとスチールギター、マンドリンを鳴らしていたり、小田さんの歌い方はリバーブが深めなんですけど、私の場合はリバーブをあえて切ることで、小田さんの曲の雰囲気とはまた違った世界観を目標にレコーディングしました。
ーー丸本さんの世界観が出た「言葉にできない」に仕上がっていますね。4月には『満月の夜の丸本さん家Vol.2』の開催も決定していて、fumika、リリィ、さよなら。の2人がお客様として出演します。
丸本:FM FUJIで同じレギュラー番組『Music Spice!』のパーソナリティーを務める2人です。fumikaさんは一度ラジオにもお邪魔したことがあって、私よりお姉さんでよくしてくださって「飲みに行こうよ」とも話しています。リリィ、さよなら。さんはラジオの収録が前後でご挨拶したことがあるんですけど、すごくいい声なので当日セッションするのが楽しみです。前回同様に私の家に来たかのようなアットホームなイベントにしたいです。