何から何までWANIMAらしいーーau CM「やってみよう」篇、元旦からの興奮を石井恵梨子が書く

 「WANIMA、ついにauにまで!! てか、WANIMAだよね?」

 そんな友人のツイートを見たのが元旦のこと。なんのことかと思っていたら、本当にテレビからWANIMAのパンクロックがバンバン流れてくるのだった。

 auの最新CM「春のトビラ・やってみよう」篇。2017年の始まりに相応しい豪華ロングバージョン。多くの人にとっては「三太郎がテンポよく面白いことをやっている」のが楽しい内容だが、音楽ファンにとっては「WANIMAのショートチューンが一曲まるまる聴ける!」、そんな最高のCMであろう。

 WANIMAのショートチューン、と書いたが、原曲は童謡の「ピクニック」。〈丘を超え 行こうよ 口笛 吹きつ~つ~〉と歌い出しを書けば誰もがピンと来るだろう。あのメロディに違う歌詞を乗せた、いわばよくある「有名曲の替え歌CM」だ。しかし最初に見たとき、私には原曲がなかなか思い出せなかった。それよりも友人とまったく同じで「てか、これWANIMAだよね?」と興奮していた。ダイナミックなバンドサウンドが、KENTAとKO-SHINのハーモニーが、イキイキと「WANIMA以外の何者でもない!」ことを主張しているのだ。振り返れば、SNSで「CMでWANIMA新曲!」と興奮している声のなんと多かったことか。

 特筆すべきはアレンジ力だ。CMは〈Yeah~LaLaLa〉というコーラスから幕を開けるが、突き抜けて明るいKENTAのハイトーンと、それよりさらに4度高い(主旋律の「ラ」に対して「レ」から始まる)KO-SHINのハーモニーが絶妙。3度、つまり「ラ」に対して「ド」のハーモニーならもっと無難で柔らかな印象になるのだが、そういう理論を考えてというより、反射神経だけで掴み取っているようなスピード感もこのバンドの大きな魅力だろう。

 たとえば、Aメロが二度繰り返される箇所(原曲なら〈空は澄み 青空~〉の部分)でKENTAの歌は一気に原曲にはない旋律へと駆け上がっていく。その主旋律に対して、上へ、下へとめまぐるしく変わっていくハーモニー。展開ごとにリフやリズムのパターンはガラリと変わり、サビに入るとFUJIとKO-SHINのコーラスがKENTAとの掛け合いになって、歌詞のストーリーをどんどん盛り上げていく。そして、原曲の一番が終わった後にもWANIMAのアレンジは続く。後半20秒は完全なオリジナル。たった一分の中にどれだけの必殺技を詰め込んでいるのかとワクワクしているうちに、〈Hey! Hey!〉の掛け声が聴こえてきてCMは終わるのだ。まるで、ライブハウスで皆がニコニコになり、汗だくで拳を上げているようなエンディング。彼ららしいなと嬉しくなり、あぁこれライブで聴きたいなとすら思う。まさにWANIMAの新曲ショートチューンだとみんなが思い込んだゆえんである。

 作詞は篠原誠氏(桐谷健太「海の声」、AI「みんながみんな英雄」も同氏が作詞)でバンドが担当したのは「編曲・歌唱」と発表されている。しかし後半のオリジナル部分にある〈倒れるなら 前に倒れよう〉なんて言い回しは実にKENTAらしいなと思う。〈前に倒れよう〉を4つの音符で一気に歌いきっていく怒涛のスピード感も。そしてまた、実際に歌ってみるとやたら速いが聞き取りづらくはない、むしろ一語一句がしっかり聴こえてくる。そんな歌の力も、何から何までWANIMAらしい。

 先日のレポートでも書いたが、WANIMAのライブでは「どんな曲でも一語一句を唱和している」ファンが圧倒的に多い。多くのパンク/ラウド系バンドが英語で歌うことを選択し、オーディエンスも言葉の意味よりノリと響きを重視して盛り上がっているのとは対極の光景だ。もちろんWANIMAだってノリは抜群だし勢いも十二分にあるのだが、それと同じくらい歌に力があり、ともに歌いたいと思わせる大衆性が備わっている。つまりポップスとして圧倒的に魅力的なのだ。そんなバンドは久しくパンクシーンから出てこなかった。「モンパチ以来?」「ハイスタ以来?」という声もあろうが、お茶の間に広がっていくポテンシャルやキャラクターの強さを考えれば、間違いなく「ブルーハーツ以来」だと思う。凄いことだ。

 パンクシーンどころかロックの枠も飛び越えて、今のWANIMAはポップフィールドを堂々と泳ぎ始めている。いつもの笑顔で老若男女を振り向かせ、タフな音楽でみんなを巻き込みながら。ちょうど一年前、auの「三太郎シリーズ」でオンエアされたのはAIの「みんながみんな英雄」だった。一年をかけて幅広い世代に愛されたあの名曲を「オクラホマミキサーの替え歌」と呼ぶ人はいない。同じように、WANIMAの「やってみよう」は「ピクニック」を超えていくのだろう。超えた先にあるものは何だ。今年の彼らのハイライトは、3月のさいたまスーパーアリーナにあるわけじゃない。それだけは確かだと思う。

(文=石井恵梨子)

「やってみよう」

■配信情報
「やってみよう」
配信開始日時:2017年2月3日(金)19時~

視聴方法
下記サービスより視聴可能。
・Music Store
auの音楽ダウンロードサイト「Music Store」から「やってみよう」ロングバージョンダウンロード
<対象> auスマートフォン利用者
Music Storeサービスサイト

・うたパス
うたパス上で、期間限定で「やってみよう」ロングバージョンが聴き放題
<対象> 「うたパス」会員
「うたパス」サービスサイト

■「やってみよう」 フルver. /WANIMA【公式】
YouTube

■au 2017年三太郎シリーズ新CM 「やってみよう」篇
スペシャルページ
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■WANIMA OFFICIAL SITE
https://wanima.net/

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