「Empire」リリースインタビュー
ACE1が明かす、海外シーンで勝負する理由「世界的に活躍する日本人が生まれれば、状況も変わる」
「J-POPのシーンをどうやってまくれるか」
ーーところで、ひとくちに「DJ」と言っても、クラブプレイを主軸にしているDJもいれば、トラックメイク/プロデューサーを行うクリエイター型のDJもいれば、フェスなどの表舞台に出ていってパフォーマンスするアーティスト型のDJもいます。ACE1さんはどのタイプをめざしているんですか?
ACE1:僕はDJとアーティストに境目はないと思ってるんです。DJとアーティストの中間があってもいいし、「MCばっかりでほとんどDJしてないじゃん」っていうヤツがいても、それで活動が成り立っていればいいと思う。もうDJとかアーティストっていう括りじゃなくて、ひとつのエンタテインメントだと思っているので。自分のフィルターを通して何かを表現できていて、それがエンタテインメントとして成立しているかどうか。それでお客さんが喜んでいるか、そこに需要があるかどうかっていうことだけだと思ってるんです。
ーーなるほど。
ACE1:しかも、音楽は時代と共にどんどんジャンルレス/ボーダーレスになっているし、時代の流れや求められるものもどんどん変化が早くなってる。その変化に応じて、何が求められていて何が必要なのかっていうことを常に模索して、いい意味で自分を変化させていかなきゃならない。だから僕は、そういう肩書きにはあまりこだわってないですね。ただ、基本的にはものづくりが好きだし、DJというカテゴライズよりはアーティストでありたいと思ってます。オリジナル曲をつくってるのはそういう思いもあるからだし、今後はそっちの色をますます強くしていきたいと思っています。
ーーでは、ACE1さんの作品づくりにおけるこだわりは?
ACE1:今回の「Empire」はヨーロッパの音を意識したし、基本的に自分でつくるものは海外を意識してます。あと、世界を視野に入れてるとリリースするタイミングも大事かなと。特に海外のしっかりしてるレーベルは遅れてる曲は出さないと思いますし。そのトレンドが世界なのか、イビザなのか、日本なのかで全然違うと思うんですけど、僕はイビザがいちばん先端だと思ってるんですね。でもイビザの感覚でガンガンやっちゃうと早過ぎるんじゃないかと。なので、僕はなるべく世界のトレンドとジャストなタイミングでつくりたいと思ってます。
ーー一方、DJとしてのこだわりは?
ACE1:こだわりということでもないけれど、J-POPはかけないですね。日本と海外ではプレイの内容も変えるんですけど、基本的には海外志向なプレイだと思います。
ーーJ-POPというのは日本のクリエイターがつくる音という意味ですか?
ACE1:そうじゃなくて、いわゆるオリコンチャートにランクインされるような日本語の歌詞のポップスです。そういう日本語の歌詞がのってくるものが今の自分のセットに入ってこない。オリエンタルという意味で日本っぽい音を出すのはいいと思うんですけど、J-POPをかけるっていうのは、自分の向かうスタイルを考えるとまたちょっと違うかなと。
ーーもともと海外志向が強かったんですか?
ACE1:若い頃はそこまで考えてなかったです。でも、徐々に徐々にっていう感じで。日本の音楽シーンではやっぱりJ-POPがいちばん強いと思うんですけど、どうやってそういう人たちをまくれるかって考えたんです。そのときに同じ日本で活動していたら頑張っても並ぶことしかできないなって。たとえばサッカーで「ワールドカップに出ました。日本代表です」となれば、もうタレントさんとかミュージシャン以上の存在だと思うんです。
ーー同じケイスケでも、桑田佳祐より本田圭佑の方がワールドワイドだろうと。
ACE1:ワールドワイドというか、もうDJとかミュージシャンとか、そういうところを超越した存在になってくる。もう文化人の領域になってくるっていうか。その位の格、レベルをめざすとなると世界だなと思ったんです。