『第5回アイドル楽曲大賞2016』アフタートーク(後編)
「コミュニティーに閉じこもる傾向も」論客が語り合う、アイドルシーンの静かなる“停滞”
「実際の現場の肌感覚とチャートには差がある」(ガリバー)
ーーそれでは最後に2017年はどういったアイドル楽曲を期待しますか?
ピロスエ:5年も開催していると、どうしても上位常連のグループが似てきちゃうので、2017年は思いもよらないようなグループがメジャー、インディーズ問わず上位に来ると面白いかな、と。あとは、サシニング娘。(指原莉乃&モーニング娘。'17)の楽曲「Get you!」が何位に入ってくるのかが楽しみですね。
ーーサシニング娘。はアプガと同じように、アイドル楽曲大賞、ハロプロ楽曲大賞の両方にノミネートされることに?
ピロスエ:そういうことになりますね。ハロヲタはこの曲を巡って喧々諤々しています。
ガリバー:今回の楽曲は入ってこないでしょうけど、もし第2弾があって……。
ピロスエ:第2弾あるの!?(笑)。
ガリバー:分からないじゃないですか(笑)。動員があるのに、ファンが投票に参加してくれていないというのは以前からある問題なので、投票が増えてほしいというのは引き続き言っていきたい。実際の現場の肌感覚とチャートには差があるので、こういうシステムを楽しんでほしいというのがあります。あとは、東京は解散、休止するグループも多ければ、面白いグループができるのも多い。amiinAを始めとした小さな運営でも、地道に力をつけて活動している。一方で、地方勢が全然ランキングに関われていなかったり。地方に行ったら面白いCD-Rを作って活動しているグループを遠征する度に発見はするのですが、グループ数が減っていたり、そいったグループが地元で完結しちゃっていたりするんですね。東京に行く必要がないという視点で、そのままジリ貧で終わっていってしまう。東京に出て行くのが全てではないですけど、このグループなら積極的に大きなマーケットに出て行けば面白いのになと思うことはあります。そいった意味で、3776は富士宮にちゃんと拠点を置きながらも、東京でライブをやっていて面白いバランスをとってると思うんですよね。そういうアイドルがもっと出てこればいいなと思います。
宗像:2016年はアイドルシーンの勢いが落ちたんじゃないかと、現場に行くと肌感覚でそう感じるんですよね。いろんなコミュニティーができて、そこに閉じこもる傾向が強くなっている。だからこそ、アイドル楽曲大賞の意味合いも強くなっていくというのもあるんですけど、シーン自体が小さくなっているんじゃないかと思い始めて制作陣も含め、だんだんと保守的にならないでほしいなというのがありますね。もう一つの流れとして、欅坂46やBiSH、寺嶋由芙と見ていくとエバーグリーンなものが志向されてると思うんですよね。保守的になるのではなく、エバーグリーンで美しいものを作ってほしい。かつて田島貴男がピチカート・ファイヴで、小西康陽、高浪慶太郎とともに目指したような真っ当なポップスに磨きをかけてガンガンいってほしいと思います。
岡島:上位にランクインしていない楽曲を、「すごい名曲だ!」「なんでこれが入んないんだ!」と言い張って推してくる人が出てきてほしいですね。あとは、楽曲だけではなく、ビジュアルやプロモーションを含め、細部一つひとつまでコンセプトに乗っ取って、全体をパッケージングしてプロデュースできているところだけが残るんだと思います。AKB48グループ、ももクロ、でんぱ組.inc、BABYMETALなどがそうであったように。だからこそ、後発のグループにはそれらのアイドルにはないコンセプトを固めて、面白いものを作って出てきてほしい。それが自己満足になっていると、運営の承認欲求を満たすだけになるので、その上で一般的にも売れるものを期待したいです。あと個人的な感覚ですが、アイドルにどんなジャンルの音楽を取り入れても、もう何も新しくはないと思うんです。そういう曲がたとえテレビで毎日流れていたとしても、もうインパクトは与えられない。だから、音楽ジャンルがどうのこうのというより、“アイドルだからこそ歌う意味のある曲”を作ってほしいなと思っています。sora tob sakanaがまさにそうで、コンセプト設計もパッケージングも完璧。2016年はオサカナ楽曲ばかり聴いていた1年でした。
宗像:2017年は新しいものが見れるといいですね。岡島さんが言っているコンセプト含めて、2016年に欅坂46がデビューしたというのはすごいことだと思うんですよ。
ガリバー:グループを統括している、運営委員会委員長の今野義雄さんのコンセプト作りが功を奏したのは間違いないです。単純に欅坂46の2年目は楽しみですけどね。
岡島:欅坂46のような巨大なグループとは別のところでまた新しいグループがブレイクすれば、再びアイドルシーンが急速に盛り上がる気がします。
(取材・文=渡辺彰浩)