CHEERZ×KKBOX×TuneCoreが目指す“アイドル楽曲との接点作り” 多様化するシーンとサービスはどう結びつく?

CHEERZ×KKBOX×TuneCore、3社特別インタビュー

 アイドル応援アプリ「CHEERZ」が、定額制音楽配信サービス「KKBOX」、楽曲販売サービス「TuneCore Japan」との3社共同プロジェクトをスタートした。このプロジェクトは、CHEERZに参加するアイドルがTuneCore Japanを通じて、KKBOXを中心に、iTunes Store、amazon music、LINE MUSICなどの音楽配信プラットフォームに自身の楽曲を配信することが可能になるというもの。主な配信先となるKKBOXは、今秋から音楽ジャンルに「アイドル」を新設し、注目音源をピックアップしていくほか、アイドル自身がミュージックキュレーターとして、様々なジャンルの音楽を紹介。キュレーター第1弾として、小山ひな(神宿)、櫻井優衣(ピンク・ベイビーズ)、青葉ひなり(FES☆TIVE)、和田輪(Maison book girl)が登場している。今回、リアルサウンドではCHEERZプロジェクトマネージャーの伊藤崇行氏、KKBOXビジネス・ディベロップメントの山本雅美氏、TuneCore Japan代表取締役社長の野田威一郎氏による鼎談を企画。3者の出会いから、プロジェクトスタートのきっかけのほか、“アイドルの交換留学”など、アイドル楽曲に触れる“きっかけ”を作るために何をすべきか、存分に語りあってもらった。(編集部)

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CHEERZ、KKBOX、TuneCore Japan 3社共同プロジェクト

 

「アイドルなんて関係ないという人間が揺り動かされる」(山本)

──まずは、今回三社が共同プロジェクトを立ち上げた理由を聞かせてください。

山本雅美(以下、山本):1月にラフォーレミュージアム原宿で開催されたアイドルイベント『iCON DOLL LOUNGE』を観に行ったんです。決してアイドルには詳しくなかったんですが、アイドルの人たちが会場で握手会とかフィジカルな面において活動しているのを見て、「デジタルってそういえばどうだったっけ?」という話になったのがきっかけでしたね。

伊藤崇行(以下、伊藤):例えば、地下アイドルと言われるインディーズのアイドルの子たちが、どうやって楽曲を広めているかというと、YouTubeに音源やライブ映像を上げたり、イベントのライブで聴いてもらう以外に方法があまりないんです。そんな眠ってしまっているアイドルの曲たちを世の中に出してあげたくて。最近では元アーティストが手掛けている楽曲なんかも増えてきていて、楽曲の魅力をもっと伝えられないかと山本さんと話したのがスタートでした。そこで一緒にタッグを組めそうな方として、山本さんから野田さんを紹介してもらったんです。

──野田さんとしてはプロジェクトを最初に話を聞いたとき、どのような印象でしたか?

野田威一郎(以下、野田):アイドルに対しては、ライブでCDを売るのが中心で、「デジタル配信ってよく分からない」とか、そもそも配信楽曲がないグループもいたりして、「このジャンルに僕たちが浸透するまでには、時間がかかるな」と思っていました。その反面、おやすみホログラム、BPM159、STARMARIE、カラーポワントなどのように楽曲に力を入れたアイドルも多くいて、このプロジェクト以前から自然発生的に3社サービスを利用してくれている事例も出てきていました。STARMARIEのみなさんがKKBOXとコラボし始めた状況で、今回のプロジェクトのお話を頂いて。僕らからすると、アイドルという新しいジャンルを開拓できる嬉しい話でした。

山本:そういえば、若いミュージシャンの友達にTuneCoreを紹介すると「え! そんなサービスあるんですか!?」と言われるんです。アイドルに限らず、インディペンデントで頑張っている人たちに、「こういうことをやったら自分たちの音楽が広がるきっかけになるんだよ」と、TuneCoreのサービスが、もっと理解してもらえるといいですね。

野田:ありがたいことに、音楽業界の方たちには、徐々に認知して頂けるようになってきました。ただ、若い学生さんや地方の方まで浸透してるかといえば、まだまだ全然で。自分で主導権を持って活動していくような積極的なアイドルたちとお話する機会は少なかったので、プラットフォームであるCHEERZと組むことで、僕らだけじゃ深く関わることもなかったかもしれない「アイドル」というジャンルに携われて、面白いなと感じています。

──改めて、それぞれ2社のサービスについてどう思うかをお伺いさせてください。

伊藤:LINE MUSICやAWAといったサービスは、アメリカやヨーロッパの音楽っぽい雰囲気を出しているのですが、KKBOXは「日本の、しかも東京のカルチャー感」があるというか。山本さんの色が出ていて、ほかの音楽サービスにないすごくサブカル感もあるように思えるんです(笑)。カルチャー感という点においては、CHEERZも共振していると考えていて。ほかのカルチャーとどう関わっていくかを重要視していますし、その繋がった先にファンがいると思っているので。TuneCoreさんについては、もっと昔に知っていたかったです。

野田:それ、よく言われます(笑)。

伊藤:前職でレーベル所属の決まっていない新人アーティストを担当した際に、会社内で「インディーズレーベル作ってみる?」という話があったのですが、結局それを見送ったという経緯がありまして。その当時TuneCoreを知っていれば完全に使わせていただいていたなと思ったのが、最初の印象でした。

──山本さんはどうでしょうか。

山本:新しいサービスが出た時は必ず試してしまうタイプなので、CHEERZはリリース当初から「アイドルを応援する」という、非常に距離が近いコンセプトを面白いと感じていたんです。アイドルを実際に現場に観に行ったら、SPINNSなどファッションブランドとコラボレーションをしていて、裾野が広がっているのを感じました。あと、うちの会社に洋楽しか聴いてこなかった若い社員がいるんですけど、最近CHEERZで課金をし始めたんですよ。どうやら応援したいアイドルを見つけたみたいで(笑)。

ーー身近に良いサンプルケースが居たんですね(笑)。

山本:そうなんです。“アイドルなんて関係ないという人間が揺り動かされる”のを間近で見て、「彼が想像出来なかったコミュニティが作られたんだな」と面白く思いました。TuneCoreさんに関しては、サービス自体は知っていたのですが、どのようにしてお付き合いしていったらいいかというイメージが湧かなかったんです。様々なサービスがある中で、自分の楽曲がどういった形で聴かれているか、再生単価はいくらかといったところまで見ることができて、これまでダイレクトにアクセスできなかった情報が、アーティストに可視化されるという点は、面白いと思いますし、大きな可能性を秘めたサービスだと感じています。

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KKBOX 山本雅美

野田:ありがとうございます。僕にとってCHEERZは「今までになかった手軽さでアイドルとの距離を近くに感じられる」サービスなんです。アイドルの濃いアンダーグラウンド的な部分って、WEBでなかなか表面化されることがないと思うんですよ。でも、CHEERZはそれらを一気に表面化させて、本人たちも面白そうに扱っているので、上手くやっているなという印象を受けました。CHEERZに参加しているアイドルの中には、TuneCoreでリリースしている子たちもいて、上位にランクインすると娘のように嬉しく思えるんです(笑)。KKBOXについては、国内においてストリーミングサービスで新しい波を作ろうとしているサービスだと思っていました。特にアジアで絶大な人気なので、例えるなら「Spotifyのアジア版」といった印象もありましたし、アーティストとチャットをしながら音楽を聴くことができる「Listen with」の機能は、個人的にもっと広がるべきだと感じています。

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