7thシングル『再燃SHOW』インタビュー

さかいゆうが語る、音楽への情熱とポップスの難しさ「止まることもなく、ずっと続けてる」

 

「長く続けるためには再燃の技術が必要」

ーーニューシングル「再燃SHOW」からも、さかいさんの多様な音楽性が感じられました。この曲は映画『幸福のアリバイ〜Picture〜』の主題歌ですが、どんなテーマで制作されたんですか?

さかいゆう:映画を観させてもらってから作りました。トレーニングじゃないですけど、ふだん映画を観るときも「自分だったら、どういう主題歌を書くかな」って思っていたりするので、お題をもらえる書き下ろしはありがたいですね。今回の場合は自然にこういう曲が出て来たから、それを録音したって言う感じですね(笑)。

ーー当然、映画のストーリーやメッセージも反映されているわけですよね。

さかいゆう:はい。いろんな人の失敗だったり、ダサいところ、恥ずかしい部分がおもしろおかしく描かれていて、人間のことが好きになれる映画だなと思って。ミュージシャンでも何でもそうですけど、人生のなかで、何回も燃える技術ってすごく大事だと思うんですよね。

ーーたとえ失敗したとしても、自分の気持ちを燃え上がらせることが必要だと。

さかいゆう:そうですね。音楽を長くやっている方、60代、70代になっても現役でやられてる方って、自分のパッションを燃え上がらせるのが上手いと思うんですよ。めちゃくちゃ激しく燃え上がり過ぎて死んでしまう人もいますけど、長く続けるためには再燃の技術が必要なので。幕末みたいに激しく時代が動いているときは研ぎ澄まされた芸術が生まれたりしますけど、僕らは平々凡々のなかでもモノを作っていかなくちゃいけないですからね。

ーーなるほど。さかいさんの音楽人生はまだ前半だと思いますが……。

さかいゆう:うん、めちゃくちゃ前半ですね。まだ何もやってないです(笑)。

ーー現時点では、パッションを再燃させる必要もない?

さかいゆう:うーん……僕はずっと弱火くらいですかね(笑)。20代の頃から「じっくり、隠れてやりたい」と思ってましたから。強火だったら、もっと早く何らかのアクションを起こしてたんじゃないですかね。だから30才デビューなんですよ。そう考えると“走る”より“歩く”っていう感じかもしれないですね。止まることもなく、ずっと続けてるというか。ふだんの生活のなかで、嬉しいこととか悲しいこととかワクワクするようなことがあって、それをもとにして曲を書き続けて。だから、今回みたいにタイアップのお話をいただけるのはありがたいですね。映画にも同じ世の中を生きているなかで感じていることが表現されているし、そこに向けて曲を書くのも好きなので。こういう応援ソングもいままでやってなかったし、助かりました。

 

ーーモチベーションを再燃させるという意味では、たとえばポール・マッカートニーのように、バンドを組むとか、新しいプロデューサーを招くといった方法もありますが。

さかいゆう:エリック・クラプトンも腕のいいプロデューサーを起用してるし、そういうことも“再燃”の技術だと思います。もしかしたら男女の違いもあるかもしれないですね。日本の女性アーティストは男性のプロデューサーやディレクターがいる場合が多いし、自分でプロデュースするタイプの方でも、その都度、いろんな才能を取り入れている印象があって。男のミュージシャンはマイペースな人が多いような気がするんですよね。長く活躍されている男性ミュージシャンって、みなさん独特じゃないですか。良い意味でまわりの意見は聞いてないというか。

ーーそうかも(笑)。

さかいゆう:まわりの意見を聞きながら音楽をやっていると、お客さんにも伝わっちゃう気がするんですよね。「こいつ、やらされてるな」って思えばシラけるし、興奮しないんじゃないかなって。年齢とかキャリアではなくて、そのアーティストのパワーを感じられないと惹かれないというか。人の意見を聞きすぎたり、空気を読んでばかりだと、音楽にもパワーがなくなる気がするんですよ。もちろん僕も例外じゃないから、人の言うことに振り回されないように、淡々と自分のことをやっていますけどね(笑)。それを何年続けられるかが勝負でしょうね。いずれにしても、ひとつひとつ純度が高い曲を作るだけですよ、僕は。作品同士の関連性も考えていないし、ひとつひとつの作品が勝負なので。

ーーマイペースに自分の表現を追求している印象はありますね、確かに。流行やトレンドも意識してないですよね?

さかいゆう:流行ってる音楽も聴いてますけどね。ただ、自分が心から楽しめないとやらないし、ちゃんとフィルターを通して咀嚼したうえで作った曲じゃないと、3年後には歌ってないと思うので。と言いつつ、僕は一応、まわりの意見は聞いてますけどね。「さかいゆうからどんな曲が出て来たらワクワクする?」って3人くらいに(参考になる)曲を出してもらって。それを聴いて「さあ、自分の音楽をやろう」っていう(笑)。直接的にはあまり関係ないかもしれないけど、出してくれた曲のなかには結構カッコいいものもあるし、レコード会社や事務所のスタッフが言ってくれることも参考にはなりますね。音楽の聴き方がミュージシャンとは違いますから。ただ、そういう意見を聞くのは多くても2人か3人まで。やっぱりトリオくらいの人数がいちばんいいんですよ。バンドの最小人数も3人だし。

さかいゆう / 再燃SHOW [Full Ver.]

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