XOXはボーイズグループ界の“パンク”を目指す 仕掛け人による戦略とグローバルな音楽性を分析
高いジャンル/カルチャーの横断性を持つ『Skylight』はマイルストーン的な作品
実際、XOXの音楽は海外のシーンの最先端を取り入れつつ、同時にポップ・ミュージックとしての質の高さを感じさせるものに仕上がっている。XOXと薮下氏とのタッグがはじまったメジャー・デビュー曲「XXX」では楽曲制作に海外作家を迎え、四つ打ちにアコースティック・ギターを混ぜ込んだN.E.R.Dを彷彿とさせる序盤と、ヒップホップ以降の感覚とJ-POP的なキャッチーさを巧みにブレンドしたサビとを融合。続く「Ex Summer」では、カイゴがノーベル平和賞の祝賀コンサートでパフォーマンスを披露するなど近年海外のポップ・シーンを席巻しているトロピカル・ハウスを基調にしつつ、アクセントとしてフィフス・ハーモニーの「Work from Home ft. Ty Dolla $ign」などで一般層にも認知を広げつつあるトラップの要素を加えることで、2016年の夏の雰囲気をフレッシュなまま楽曲に落とし込んでいたのが印象的だった。
そして今回の「Skylight」では、ライブを想定したと思しき冒頭のクラップに続いて、バトシン、田中理来、木津つばさの3人によるラップがカットイン。サビではとまんが歌詞を手掛けたクリスマスの聖夜を連想させる甘いボーカルを加えることで、ポップさとエッジの間を自在に行き来するXOXの雰囲気がこれまで以上に前面に押し出されている。5人のボーカル/ラップ・スキルも成長を感じさせ、それぞれのキャラがより明確に伝わってくるようになったのも大きな特徴だろう。2曲目「THE MUSIC」では、ライブを意識してよりクロい質感の本格的なファンク/モダンR&Bに接近。そこにインディーズ時代からあるグループのはじまりの曲にしてレゲエのアレンジを取り入れた「ダイジョーブ」を加えた全3曲は、音楽的には多方向に振り切れつつも、精神的にはアシッドジャズを筆頭にした90年代の欧州のクラブ・カルチャーや2ステップ/ガラージとR&Bを融合させたクレイグ・デイヴィッドにも通じる、ポップにおけるジャンル横断的なバランス感覚の高さを伝えてくれる。
「宇多田ヒカルの新譜にKOHHが参加したのも象徴的でしたが、海外ではそれこそ往年の女性R&Bグループ、SWVの曲にウータン・クランがラップしたり、ポップスとラップの最先端の距離は近かったと思います。でも、日本のボーイズグループにおいてはそこが分断している印象がある。『Skylight』は、だったらエイサップをはじめ海外のヒップホップが好きになり始めたバトシンにライブでもラップしてもらおうというアイディアが発端になりました」(薮下)
「加えて、冬を思わせる詩的な歌詞の世界観はとまんの発案ですね」(丸本)
「これまでの2枚はXOXのグループ・イメージを浸透させるため、敢えて匿名性に寄せた物語だったんですが、今回の3枚目に関しては当て書きのようにして、よりメンバー自身の個性を反映させています。それぞれのスキルも上がってきているし、リスナーとしても視野が広がってきているので、僕らも一緒にやれることが増えてきている状態で。そういう意味でも、この3枚目はグループにとってのマイルストーン的なシングルになっています」(薮下)