2.5次元ガールズクルー DEVIL NO IDが体現する、ポップカルチャーの“新しい刺激”

 多くのアイドルやクリエイターの作品に顕著なように、現代の最もカッティング・エッジな出来事は大衆性と先鋭性とを兼ね備えたポップカルチャーの中心で生まれている。そんな時代ならではのガールズダンスクルー、DEVIL NO IDをご存じだろうか。「身元不明の悪魔」として突如沖縄に現われたこのグループは、karinとhanaのヴォーカル、mionのラップを基軸にしてヒップホップ/J-POP/トラップ/EDMなど最先端の音楽を横断しつつ、そこにストリートダンスやマンガ/アニメをメディアミックス的に融合。さらに、それぞれの要素が本格的であることで、今のポップカルチャーらしい刺激的な魅力を体現している。
 

DEVIL NO ID「EVE –革命前夜–」MV

 

 その基盤となるのは、何と言っても彼女たち自身の高いダンス・スキル。それぞれがハウス/ロッキング(karin)、ガールズヒップホップ/パンキング(hana)、ヒップホップ/パンキング/ガールズヒップホップ/ニュースクール/レゲエ(mion)といった得意ジャンルを持つ3人のダンス能力は新人としては驚くほど高い。つまり、彼女たちはPerfumeやBABYMETALといった同じく3人組の人気ガールズ・グループと同様、第一に「パフォーマー」として優れた能力を持っているということ。しかし、前述の2組と決定的に異なるのは、サイバーパンクを飲み込んだエッジの効いた世界観だ。10代ならではのコントロール不能な反抗や自由を歌う姿は、まるで近未来サイバー世界に現われた若きレジスタンスのよう。「キュート」よりも「クール」が似合うストリート文化に根差した不良的なエッセンスは、ライブパフォーマンス、音楽の先鋭性、そして歌詞にも含まれ、タワーレコードの企画「NO MUSIC , NO IDOL?」で「IDOL」の文字を「×」マークで打ち消したことにもDEVIL NO IDのスタンスが表われている。

 9月21日にリリースされた1stシングル曲「EVE -革命前夜-」は、その雰囲気を反映し、ももいろクローバーZやKOHH、DAOKOの楽曲も手掛けるTeddyLoidがプロデュース。彼らしいEDMやベース・ミュージックにDTM特有のカットアップを加えたトラックを提供している。また、カップリング曲の「BANDANA」では低音ベースを駆使し、アメリカでポップシーンを席巻中のトラップ色濃厚なサウンドを披露。J-POP的な魅力からUSのメインストリーム・ポップやフロアを揺らす王道のEDM、ディプロのマッド・ディセント周辺を中心に広がるトラップ~フューチャーベースまで、その音楽の参照点は多岐にわたっている。また、ラップ詞は『フリースタイルダンジョン』でお馴染みのKEN THE 390のレーベルに所属するKLOOZが担当。mionのフロウがトラヴィス・スコットやチーフ・キーフ、キース・エイプ、KOHHといったトラップ以降のヒップホップとリンクしているのは、昨今のラップアイドルのフロウと比べても革新的に新しい。と同時に、ライブのラストに披露される「Sweet Escape」のように、ダンスミュージックを通過したJ-POPの王道と言える楽曲も軒並みクオリティが高く、そのサウンドは王道と最先端とを繋ぐ二面性を持っている。水曜日のカンパネラが出演するラジオ番組『SPARK WEDNESDAY』(J-WAVE)で曲が紹介されるなど、早くもカルチャー方面で話題を呼びつつある。

 

 そして、このプロジェクトを最もユニークにしているのは、オリジナルのマンガを使ったビジュアル展開だ。CDの初回盤には『AKIRA』にも通じる退廃的な世界観の未来の東京を舞台に、変形するタコス販売ワゴンに乗り込んだ3人が敵と格闘し、旅を続ける書下ろしマンガ作品を封入。作品自体のクオリティが高いだけでなく、ここでしか知ることが出来ないトピックも多いため、彼女たちの活動に欠かせないピースのひとつになっている。この作品を手掛けるのは、DEVIL NO IDのビジュアル面を監修するクリエイターチーム『POPCONE』のイラストレーター/グラフィックデザイナー、うとまる。ORESAMAや上坂すみれらとの仕事でも注目を集める彼女のポップなイラストが3人のキャラクターと化学変化を起こし、現実と架空のストーリーが絡み合うことでDEVIL NO ID独自の世界観が生まれている。これはある意味、アニメ作品と現実のアーティストがシンクロする昨今の2.5次元ガールズクルーと言えるかもしれない。

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