SMAPとはどんなアイドルか? 中森明夫×矢野利裕が激論交わす

「SMAPのメンバーが変わるというのは考えられない」(中森)

中森:だけどSMAPはもう40代でしょ? 今回の事はアクシデント的なことだったかもしれないけど、あれで50代、60代までいくのかなと誰しも考える。これまでのジャニーズでいえば、たのきんトリオはもうバラバラだし、少年隊もいるけど昔のような活動は見られない。SMAPはこのまま50、60までいくのかなと疑問ではあった。解散危機は乗り越えられたとはいえ、「あ、こういうかたちでもしかしたら終わるかもしれなかったんだ」という驚きはありましたよね。AKB、宝塚、モー娘。……彼女たちはメンバーが変わりながら存続しているけど、SMAPがメンバー全員変わって残るということはありえない。ジャニーズの新しいグループが出てきて新陳代謝はあるかもしれないけど、SMAPのメンバーが変わるというのは考えられないよね。

矢野:そもそも、40代のSMAPをアイドルと呼んでいること自体、冷静に考えると驚きの事態です。

中森:20年前は絶対そう思わなかったよね。

矢野:そう考えると、60代になっても依然としてアイドルだということもありえる気がしますね。

中森:例えば、松田聖子はやっぱりいまもアイドルだと思うんですよ。小泉今日子ももう50でしょ? 彼女たちもすごいと思う。むしろ今回の女子アイドル・ブームに関して言うと、田中秀臣先生とか大森望さんが『50代からのアイドル入門』的な本を書いていて、アイドルの現場に行くと年長の人もすごく多い。それはアイドルだってビジネスだから、要はライヴにお金を落とすことができるのが、年長者だということ。少子化プラスいまの若い世代はお金を使わないじゃないですか。だから当然アイドル産業が年長者のものになっていって、アイドル自身も卒業しなくなるのと同時にファンも卒業しなくなる。

 女の子アイドルの場合で言うとかつて冬の時代がきて、そこで多くのファンがアイドルの現場から離れてしまった。ところが近年、もう一回40代・50代で「現場行ってみるか」という風潮がある。ジャニーズの場合、それがずっと途絶えないで続いてきたことがすごいんだけど。女の子のアイドル・ブームには明らかに断絶の時期があるんですよ。アイドル文化の面白さというのは、そういうビジネスであったり、一つの産業であることでもあって。例えば、矢野さんの作品が優秀作に選ばれた純文学みたいなシーンでいうと、こんなことはないじゃないですか。文学はそれ自体の価値で語らなければいけないからね。

<第一章より抜粋>
SMAPは終わらないーー気鋭の批評家・矢野利裕による新たなグループ論

<第二章より抜粋>
SMAPは“カジュアル”なアイドルだったーー90年代の音楽文化からグループを読み解く

<第三章より抜粋>
SMAPは「シブトクつよい」ーーメロウでアーバンな名作『SMAP 009』を振り返る

※続きは、書籍『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』にて。

■書籍情報
『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』
価格:1,600円(税込価格:1,728円)
判型:四六判
総頁数:248頁
発売:8月9日
発行/発売:垣内出版

予約はこちらから

【目次】

・はじめに
SMAPは音楽で“社会のしがらみ”を越えるか? ジャニーズが貫徹すべき“芸能の本義”

・第一章 SMAP的身体論
〈SMAP的身体〉と挫折の記憶 / SMAPの〈芸人〉性 / SMAPとクラブ・カルチャー / フリー・ソウルと森且行 / 夜空のむこうに咲いた花 / 解散騒動へ/から

・第二章 Free Soul : the classic of SMAP――SMAPを音楽から考える
ゲスト:橋本徹(SUBURBIA)、柳樂光隆(Jazz The New Chapter)

90年代という時代性 / SMAPと“渋谷系”文化 / 「アーバン」がキーワード / ディスコティックな感覚と生音感 / 『bounce』とSMAP / “黒い”SMAPの時代 / カフェ・ブームとSMAP / 時代を反映した“DIY感” / ギターソロが少ない? / SMAPの“フリー・ソウル感” / 2000年代、サウンドの変化 / 楽曲提供に恵まれたSMAP / 2010年代、“らしさ”の復活 / SMAP代表曲サウンドの魅力 /『SMAPPIES』はジャズ・ファン向けのガス抜き / 他グループとの音楽性の比較 / ルーツは少年隊のB面にあり?

・第三章 SMAPがたどった音楽的変遷〜触れておくべき8タイトル〜
SMAP 001 / SMAP 006〜SEXY SIX〜 / SMAP 007〜Gold Singer〜 / SMAP 008〜TACOMAX / SMAP 009 / BIRDMAN〜SMAP 013 / Pop Up! SMAP / Mr.S

・第四章 世界に一つだけの場所・にっぽんのアイドル論
ゲスト:中森明夫(作家/アイドル評論家)

アイドルと批評 / アイドルを人類史的に考える / 『敗戦後アイドル論』 / ファンたちの偉大な歴史的勝利 / スター性を放棄/獲得したSMAP / 文学と芸能 / アイドルは神なのか人間なのか / アイドル、ジャニーズはどこへむかう?

・あとがき

【書籍内容】

批評家・矢野利裕による、あの国民的グループへの緊急エール!!

2016年1月、日本全体を揺るがした SMAP解散騒動。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でのメンバー謝罪会見を端に、矢野利裕が音楽総合サイト『リアルサウンド』で執筆したコラム「SMAPは音楽で“社会のしがらみ”を越えるか? ジャニーズが貫徹すべき “芸能の本義”」の大反響を受け、緊急出版。世界にひとつだけの「SMAP」の存在と今後を、音楽と芸能から紐解いた“SMAP論”の決定版。

《論考&ゲスト放談でSMAPを徹底考察》
SMAPの音楽に詳しい編集者・橋本徹氏とJazz評論家・柳樂光隆氏を迎え、これまで深く語られなかったSMAPの音楽的魅力を深堀り!また、アイドル評論家・中森明夫氏を迎えてAKBとジャニーズ、日本独自のアイドル文化についての白熱論議!その他論考&ディスクレビュー、あらゆる視点でSMAPを語り尽くしました!

【著者プロフィール】

矢野利裕(やの・としひろ)
1983年、東京都生まれ。批評家、ライター、DJ、イラスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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