Awesome City Clubは“特別なバンド”になり得るか? リキッドワンマンで見せた変化と可能性
Awesome City Clubが7月8日、満員の恵比寿リキッドルームでワンマンライブ『Awesome Talks -One Man Show-』を行なった。このライブは、バンドが抱えていた課題を解消し、明確に次のステージを提示した内容だった。
ライブのハイライトは早くも2曲目「Vampire」で訪れる。最新作『Awesome City Tracks3』のリード曲であり、PORIN(Vo./Syn.)がメインボーカルと作詞を担当した同曲。これまでのライブではクールかつ妖艶に歌い上げていた彼女が、跳ねるように動き回り、キュートな歌を披露しながらガンガンと客席を煽る。この変化は先日のインタビューでも触れたが、「自分を作るというよりは、自分の素をもっと出せばいいんじゃないかという考え方に変わった」という心境から、先日出演した『CONNECTONE NIGHT Vol.1』を境に一気にギアチェンジしたことで起こったものだ(参考:「これまでは“傾向と対策”でやってきたバンドだった」Awesome City Clubが語る、3rdアルバムでの明確な変化)。
この日は彼女のパフォーマンスだけではなく、各メンバーの演奏にも変化がみられた。ユキエのドラムはこれまで見たライブよりもずっしりと重心の低いものになっていたし、フロントマン2人を強調するために一歩後ろの立ち位置に変更したというマツザカタクミ(Ba./Syn./Rap.)とモリシー(Gt./Syn.)も、atagi(Vo./Gt.)とPORINの勢いに触発されてか、より力強いパフォーマンスで応えていた。ACCはどちらかというと、atagiの歌声やメロディ・アレンジに巧さや心地よさを感じるバンドだったのだが、「Vampire」で見せた演奏は、5人の個性が前面に出ており、リズム、歌、メロディのすべてが同居する、絶妙なバランス感覚だった。
5人がこの絶妙なバランス感覚を会得したことには、しっかりとした理由がある。最新作『Awesome City Tracks3』についてのインタビューで、atagiが「今までと違うものを作らなければと試行錯誤したのですが、うまく組みあがらず、一度制作途中だった楽曲をすべてリセット」して作り直し、「いままでは体に響くダンスミュージックを志向していたのですが、今回は言葉も心に響く作品にしよう」と語っているように、アルバム制作を通してバンドの本質と、音楽を通じて達成すべき目的に向き合ったこと。そして、PORINの成長とともにバンドの各メンバーが自分の個を強く出せるようになっていったことが主な要因だ。この成長は、セッション要素の強い「Jungle」や曲の複雑さゆえにこれまでは演奏するのも一苦労だった「アウトサイダー」などにも顕著に表れていた。