「これまでは“傾向と対策”でやってきたバンドだった」Awesome City Clubが語る、3rdアルバムでの明確な変化

ACCが語る、3rdALでの“明確な変化”

 Awesome City Club(以下、ACC)が6月22日、3rdアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースした。同作はいしわたり淳治や高橋久美子、LEO今井を作詞クレジットに迎え、サウンド面でも歌にスポットが当たる構成になるなど、バンドが持つ可能性をさらに拡張した一作となっている。先日公開した『CAMPFIRE』を運営する株式会社ハイパーインターネッツの代表取締役・家入一真氏との対談では、主宰のマツザカタクミ(Ba./Syn./Rap.)が「チームとして、いろんな人の力を借りながらやっていければ」と話してくれたが、その考えに至るまで、バンド内では同作を制作するうえでの葛藤があったという。今回は2曲で作詞を担当したフロントマン・PORIN(Vo./Syn.)がバンドやソロのライブで感じた成長や、多くの作詞者が混ざる作品内でボーカリストとしてatagi(Vo./Gt.)が表現したことなどを通じ、その葛藤から抜け出すに至るまでのエピソードについて訊いてみた。(編集部)

「自分の素をもっと出せばいいんじゃないかという考え方に変わった」(PORIN)

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atagi(Vo./Gt.)。
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――前回の対談でも話しましたが、いしわたり淳治さんや高橋久美子さん、LEO今井さんを作詞に迎えたところが、『Awesome City Tracks 3』の大きなトピックです。バンドの可能性を広げるための試みだと思うのですが、なぜこのタイミングで外部の力を導入したのでしょうか。

atagi:まず、今回は「タイトルを『Awesome City Tracks』シリーズの連番にはしない」というところから制作がスタートしたんです。そのぶん、今までと違うものを作らなければと試行錯誤したのですが、うまく組みあがらなくて。新たなマインドにするために一度制作途中だった楽曲をすべてリセットして作り直したんです。2度目のスタート時には「自分たちがやりたいことを、もう少し研ぎ澄ませて作る」ことをテーマにしました。いままでは体に響くダンスミュージックを志向していたのですが、今回は言葉も心に響く作品にしようと。そう考えたときに、言葉のプロフェッショナルとタッグを組むのがいいんじゃないかという話になったんです。

マツザカタクミ(以下、マツザカ):意固地になって『Awesome City Tracks 3』じゃない何かを作ろうとして、グチャグチャになってしまったのですが、一回リセットしたときに、ACCが初期に掲げていた“良ければ何でもいい”というスタンスを取り戻したんです。僕らはバンドではなくClubだから、“助っ人”ではなく同じクラブの一員として新しいものを生み出すことができたらと思っていて。

PORIN:普通のバンドじゃ出来ないことをやってみたいという気持ちが強かったというのもありますね。これまでもACCは、映像やアートなど、いろんなクリエイターさんとコラボレーションをしてきましたが、音楽面で足りない部分、理想に近づけない部分があったので、そこを助けてもらったという取り組みです。

――『Awesome City Tracks 2』から『Tracks 3』の期間にACCのライブなどを見て「いま、すごく試行錯誤しているな」と感じることが多かったのですが、やはりそのような葛藤があったのですね。先日の『CONNECTONE NIGHT Vol.1』は、その苦悩からの脱出を感じた素晴らしいライブでした。

マツザカ:アルバムを作ることでデトックスできたというか、気づいたことも沢山あったので、それがいい感じにライブへ反映されたんだと思います。

――そのなかでも特に様変わりしたと感じたのは、PORINさんのパフォーマンスで。今まではACCのクールなイメージを体現していたと思うのですが、先日の『CONNECTONE NIGHT Vol.1』では、フロントマンとして誰よりもダイナミックに動いていたのが印象的でした。

PORIN:これまで試行錯誤して、いろいろ試してきたんですけど、その中でひとつ気付いたところがあって。自分を作るというよりは、自分の素をもっと出せばいいんじゃないかという考え方に変わったんです。最近はそれがようやく表現として皆さんに見せることができるようになってきましたね。これまではライブで180°と言っても良いくらい人格が変わってましたから(笑)。

――そこからPORINさんの中では、徐々にマイナーチェンジしてきたということなのでしょうか。

PORIN:いえ、一気に『CONNECTONE NIGHT Vol.1』からギアチェンジしました。私自身は皆さんから言っていただけるようなオシャレというイメージより、もっとエモーショナルな部分が多いと思っていますし、かなり人間臭いキャラクターなので。

atagi:そのあたりの変化は、隣で見ていてハッキリと感じました。いつかのツアーか遠征の帰りに、車の中でPORINとそのあたりについて話したことがあったんですけど、普段のPORINとミュージックビデオなどに出ている清廉潔白なイメージのPORINには違いがあると思っていて。どっちがいい悪いというわけではないのですが、僕らが近くで見ているPORINは、もうちょっと面白みや洒落っ気のある人間なんです。そういう普段とステージとの違いがどんどん無くなってきていると感じるし、ありのままの自分をステージに立たせることができるようになったという印象ですね。

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PORIN(Vo,Syn)。

――あと、PORINさんは最近ソロでのライブも複数回行なっていますよね。

PORIN:武者修行的な感じですね。ソロライブではギターの弾き語りをやっているのですが、一人でステージに立つことで、普段は相当メンバーに支えられていて、自分はそれに甘えていたと実感することができます。でも、その分歌いたいように歌を歌えるし、だからこそ自分の歌に対する気付きが本当に多くて。普段は見えなかった自分のクセが手に取るようにわかりましたし、良い部分も悪い部分も知ることができたので、有意義なトライでした。

マツザカ:ACC内でもPORINがスタック気味だったときに、ソロライブ自体は何度か企画していたのですが、実現するに至らなかったんです。でも『Awesome City Tracks 3』の制作時に何度か話し合って、いろんなことがクリアになってきたとき、メンバー内で歌の重要性を再度認識しました。だからこそ、最近のライブでは僕とモリシーが少し後ろに下がって、よりatagiとPORINがフロントマンであることを強調しているし、2人が頑張らないとどうにもならない状況になっている。そういう状況が誰の強制でもなく、自分たちによって自主的に作れていることも大きいです。

atagi:人間が“イケてる”風に見えるのって、その人が自分のやりたいことをやって、感覚が増長しているからだと思うんです。そういう意味で今のACCは、メンバーが好き勝手にやりたいことをやりつつ、チームとしても団結できていますね。

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――いま、マツザカさんとPORINさんから歌の重要性についての話がありましたが、『Awesome City Tracks 3』のレコーディング時は歌に対してどのような意識で臨んだのでしょうか。

PORIN:私は『Awesome City Tracks 2』の「アウトサイダー」で、自分の歌がすごい変わったと感じていて。その原因を考えてみたんですけど、自分自身の成長というよりも、歌う言葉の力が強かったという部分も大きいと思うんです。今回はそれに加えて、初めて自分のことを自分の言葉でこんなにも書いたので、より強い歌になったというか、情念がこもったというか……(笑)。

atagi:ここでもやはり歌詞がキーワードになってきますね。自分が書いたものもそうですし、書いてもらったものも含めて言葉が強くなったし、広く届いて共感してもらえるようなものになったからこそ、歌がしっかり伝わるようになった部分はあると思います。

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